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第62話

相馬さんは相変わらず笑顔だった。氷川颯真の言葉を聞くと、目には賛同できないという気持ちが現れた。「本当のことを言っただけですよ。坊ちゃんは本当に偏食がひどくて、いろんなものを食べないんですから」

氷川颯真の顔は赤くなった。橋本美咲は驚いた様子で颯真を見つめた。彼がこんなに親しげに人と接するのは珍しいことだった。

別の場所でお茶を淹れたり、ケーキを作ったりしていたシェフたちも相馬さんの言葉を聞き、すぐに頷いた。「そうです、そうです、坊ちゃんは好き嫌いが多いです。毎回作った料理が口に合わないと、食べないんです。こんなに苦労したのにね」

三人は口々に颯真の偏食を訴えた。

これを聞いた橋本美咲も氷川颯真を少し不満げに見つめた。「颯真、他人の好意はちゃんと受け入れないといけないわ。そんなに簡単に無駄にしてはいけないの」

氷川颯真は少し悔しそうに言った。「でも、本当に嫌いなんだ…」

橋本美咲は腰に手を当てた。「嫌いでも食べなさい。これは他人の好意のためだけじゃなく、自分の健康を守るためでもあるのよ。栄養はバランスよく摂らなければならないから」

氷川颯真は悔しそうに頷いた。

三人のシェフは自分たちの坊ちゃんと奥様のやり取りを見て、優しい笑顔を浮かべていた。氷川颯真を叱った後、橋本美咲はふと気づいて、颯真に尋ねた。「まだこの三人のおじさんたちの名前を知らないわ。颯真、紹介してくれない?」

「お粥を煮ているのが相馬さんで」氷川颯真は不満そうに、しかし紹介を始めた。「ケーキを作っているのが戸張さんで、お茶を淹れているのが宗像さんだ。みんな、僕が小さい頃から面倒を見てくれているんだ」

橋本美咲は納得し、この人たちが目上の人であることを理解した。そして、すぐに三人のシェフに挨拶した。「戸張さん、宗像さん、相馬さん、こんにちは。私は橋本美咲といいます」

三人のシェフは笑いながら手を振った。「いやいや、奥様、そんなに気を使わないでください。むしろ、うちの坊ちゃんこそ、ご迷惑をおかけしますね」

彼らが奥様と呼ぶのを聞いて、橋本美咲は顔を赤らめた。そして、氷川颯真を幼い頃から見守ってきた三人のおじさんたちも、美咲を大変気に入った。

こうして、三人のシェフはますます橋本美咲に対して親切になり、次々と美味しいものを勧めてきた。

橋本美咲はその熱意に圧倒された。あれこれと一口
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