共有

第51話

多分、橋本美咲の心の困惑を察したのか。氷川颯真は一瞬黙り込み、続けて言った。「もちろん、企業をグローバルに展開するのは、非常に難しいことだとわかっている。だから、その二十億の資金はスタートアップ投資にすぎない。

「もし満足のいく事業計画を提出できれば、もっと投資しても構わない」

この言葉を聞いて、橋本美咲の眉間のしわがほぐれ、笑顔が広がった。もし、氷川颯真の言葉が本当なら、事はうまくいくかもしれなかった。

なんとかすることはできるだろうが、しかし、氷川颯真の突然の行動には疑念が残った。夫婦とはいえ、美咲に対してあまりにも親切すぎるのではなかったか?

橋本美咲は疑いの目で氷川颯真を見た。「颯真、あなたはよく企業にこんな風に投資するの?こんなに大らかだと、何か裏があるんじゃないかと思ってしまうわ」

氷川颯真は笑みを浮かべながら、手を振った。「どうしてそんなことがあるんだ?美咲は僕の妻だ。君のビジネスの才能を信じているよ」

橋本美咲は諦めたようにため息をついた。慰めようとしていたでしょう。もし自分の頭脳が氷川颯真と同じなら、今の会社がこんな状態になるわけがなかった。

氷川颯真は橋本美咲の頭を軽く叩いた。「自信を持って。言っておくが、美咲の会社の株式、30%を貰うからね」

橋本美咲は構わないように頷いた。氷川颯真は全財産の半分を分けたから。彼女はただ、会社の株式の30%を分けるくらい何でもなかった。しかも、氷川颯真の投資があれば...

株式なんて問題ではなかった!

会社が経営困難にならなければ、株式を氷川颯真に半分分けても構わないのだ。結局、夫婦の財産は共有財産って、法律にそう規定されたから。

しかし、氷川颯真も心の中で自分の計算をしていた。

妻は本当に純粋だな。どうりでいつも橋本月影に勝てなかったわけだ。あの娘は一目見ただけで、計算高いとわかった。後で妻にもっと本を買ってあげよう。

この投資も最大限に力を入れるつもりだった。妻がこれまで苦労してきた会社が、こんな状況で無くなるなんて、もったいなすぎた。

それから、商売のことももっと教えてあげなければ。

さらに数人を追加するか。

この計画は完璧だった!何?氷川颯真がそんなに多くの金を投資して、損失を恐れなかったのかって?

冗談じゃない。氷川颯真は自分の見る目は、今まで一度も間違ったことがなか
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status