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第44話

橋本美咲と氷川颯真は静かに朝食を終えた。スタッフが皿を片付けた後、颯真は美咲の手を取った。

「行こう、もう少し遊びに行こう」

しかし、橋本美咲は一歩下がって首を横に振りながら、氷川颯真に言った。「ううん、急にちょっとした用事が思い出した」

氷川颯真は少し不思議に思った。「何の用事?そんなに忙しくないはずよね?」

彼は橋本美咲のスケジュールを思い返してみたが、確かに、今日は特に予定がないはずだった。

本当は時間があったが、この前の嫌なことを思い出したせいで...橋本美咲は目を伏せた。その目には何も感情が見えなかった。

「実は、最近会社のことが色々あった。しかも、数日間休んでいたから、これ以上放っておけないの」

氷川颯真は納得した。「美咲の漫画会社のことか?」

橋本美咲は頷いた。

「わかった、じゃあ送るよ」

休暇はいつでも取れるが、妻の大事な仕事を邪魔するわけにはいかなかった。

氷川颯真はすぐに決断し、方向を変えて、橋本美咲を地下駐車場へ連れて行った。

橋本美咲はまだ自分の会社のことを考えていて、足元の道には全く注意を払っていなかった。ただ氷川颯真に導かれたままで、地下駐車場に行った。

「美咲ちゃん、どの車に乗りたい?」

突然の質問に橋本美咲は我に返った。彼女はぼんやりと頭を上げ、駐車場の車を見渡した。

「どの車が颯真の車?それに乗るよ」

氷川颯真は笑った。「ここにある車は全部僕のだよ。奥さんは全部乗りたい?」

橋本美咲は呆然とし、氷川颯真のハンサムな顔を見つめた。「これ...全部、颯真の?」

氷川颯真は橋本美咲の質問に頷いて答えた。

橋本美咲は一瞬ぼんやりとした。氷川颯真が裕福だということは前から知っていたが、ここまで裕福だとは思っていなかった。

こんなすごい人と結婚した?

この時、橋本美咲は初めて現実感がないと感じた。

「奥さん?」

氷川颯真は橋本美咲の目の前に手を振ってみた。「どうした?ぼんやりして」

橋本美咲は顔を赤らめ、どれでもいいからと適当に一台を指さした。

氷川颯真は眉を上げた。「ポシェル911か、奥さんは良いセンスをしてるね」

そう言って、橋本美咲を車に乗せると、高速道路に入った。

運転しながら氷川颯真は話し続けた。「奥さんが、もしこの車を気に入ったなら、あげるよ。毎日これに乗って行けばいい」

橋本
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