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第181話

氷川は、まさか!彼は毅然とした態度で

「三千万円」と宣言した。

その一言で会場は一瞬にして静まり返った。二千二百万円程度の宝石に、氷川グループの社長が一気に三千万の値をつけたのだ!

しかも、これが最初の商品だった!

しかし、これが最初の商品にもかかわらず、誰も彼に競りかけようとはしなかった。氷川さんが欲しいと思ったものは、今まで一度も手に入れられなかったことがなかった。

その圧倒的な力に、他の競り手たちは身を引かざるを得なかった。ただ宝石一つで、氷川颯真に逆らった必要はないだろう。おそらく、彼もただ奥様を喜ばせたいだけなのだろう。

「人魚の涙」は確かに美しいが、氷川さんに挑んだのは得策ではなかった。

「他に入札者はいらっしゃいますか?」

オークショニアが問いかけるが、会場は沈黙を保っていた。

「三千万、一度」

それでも誰も応じず、「三千万、二度」

「三千二百万!」

その時、女性の柔らかな声が響いた。皆が驚いてその声の方を見た。氷川に競りかけるなんて、誰がそんなことを?

それは斎藤貴美子だった。彼女は冷静にオークション札を掲げ、氷川の価格にさらに二百万を上乗せした。

その態度は、まるでこの宝石が非常に気に入っていたかのようだったが、実際にはそうではなかった。

氷川さんがこの宝石を入札したのは、隣の女がそれを気に入っているからだった。

どうして氷川さんがあの女のためにお金を使ったのか?

彼女は納得がいかなかった。斎藤は幼い頃からずっと特別扱いを受けてきた。だから、こんな場面で誰かに先を越されたなんて、ありえなかったと思っていた。

ただの宝石一つ。彼女が手を挙げれば、氷川さんはきっと譲ってくれたはずだ。

斎藤は自信たっぷりに思った。

「三千五百万円」と、氷川は諦めず競り合った。

それを聞いた斎藤はその自信は崩れ去った。

何?氷川さんが本当に入札したなんて!

信じられなかった。いつもは何でも譲ってくれていたのに…あの隣にいた女のせいだわ!怒りで体が震えた斎藤は「三千七百万円!」とさらに叫んだ。

しかし、氷川は冷静に「四千万円」と即座に応じた。

氷川にとっては、ただ四千万円。それよりも、美咲が気に入ったこの宝石をどうしても手に入れたかった。

斎藤は悔しそうに唇を噛みしめ、

「五千万円!」と再び声を上げた。

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