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第189話

「斎藤です」

向こうからは穏やかな声が響いた。「斎藤さんは先ほど丹波の皇室の任務を引き受けた方ですよね?」斎藤はすぐに警戒心を抱いた。さっきの丹波の国の警告を思い出し、彼は毅然と答えた。「何を言ってるんだ、詐欺の電話なら切らせてもらうぞ」

相手は一瞬沈黙したが、斎藤がこんなにも予想外の対応をするとは思わず、少し忍耐強く話を続けた。「ご安心ください、私は正当な方法であなたの連絡先を知りました。

「実には、相談したいことがあります。私は今の姫様の側近です。姫様は、自分の行方不明になった姉がどんな人なのか知りたがっています。ですので、その姫を見つけたら、まず私に報告してもらえますか?前金をお支払いします」

斎藤の心の中で警報が鳴り響いた。皇室内の権力争いや、女性同士の複雑な感情が頭をよぎった。

彼は断ろうとしたが、その瞬間に携帯に通知が届いた。

なんと五十億ドルが彼の口座に振り込まれていたのだった。

彼は手が震えた。簡単に彼の口座情報を把握していたこの相手、権力は底知れなかった。でも、丹波の国でも逆らうことはできなかっただろう。

やむを得ず、斎藤は相手の依頼を受け入れるしかなかった。

最悪の場合、彼ら二人が一緒に真実を伝えたことになったかもしれなかった。自分は契約違反にはならないし、丹波の国の秘密を知る者はきっと高位の人物であるはずだった。そんな人間が自分を危険な状況に巻き込んだことなどできただろうか?

彼がその電話をかけてきた時、二人は一蓮托生の関係になったのだから、彼が裏切ることはないはずだった。斎藤は一瞬戸惑いを覚えたが、携帯の画面に表示された五十億ドルを見て、この事実を隠すことを決意した。

「金の力で何でも動かせる」という言葉がまさに真実であると感じた。

斎藤は自分たちの持った権力を駆使し、全国で密かに人探しを始めた。一方、氷川は美咲を守ったために彼女の周辺の警備を強化し、同時に斎藤俊彦の任務の真相を探ろうとしていた。

一方で、美咲はこの状況を全く知らず、いつも通り会社に出勤し、スケッチを描き、木村社長と仕事の打ち合わせをしていた。

数ヶ月後、忙しい日々を過ごしていた美咲はついにその努力が報われた。彼女のスタジオがパートナーと共同で制作した初めての漫画が、ドラマとしてテレビで放送された。

出演者は全員美男美女で、演技力も優れていたため
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