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第180話

斎藤家の令嬢は不満そうに爪を嚙んだ。普段の淑女らしさを全く気にしていなかった。

あの女は誰なの?どうして氷川さんのそばにいるの?氷川さんのそばにいられるのは、彼女だけのはずじゃなかったの?

それに今回の席を配置した責任者は一体どういうつもりなの?どうして彼女の席を氷川さんから、こんなに離れた場所に配置したの?私たちは幼い頃から一緒に育ったんだから、近くにいるのはおかしくないだろう。こんな配置にしたら、他人にどう思われるか分かったもんじゃないわ。

帰ったらおば様に甘えてやる。今日席を配置した人はもうおしまいよ!そう思いながら、斎藤お嬢様は席を立ち、氷川颯真のそばに行こうとした。

どうせ、氷川さんは彼女のものなんだから。彼のそばに座っちゃう。

ところが、オークションが突然始まった。

斎藤お嬢様は仕方なくまた席に戻り、不機嫌そうに座り直した。皆が競り合っている時に、席を外すのは目立ち過ぎたし、そんな失礼な姿を他人に見られたくなかったのだ。

さっき既に失礼な姿を見せたよ。

「紳士淑女の皆様、年に一度のチャリティーオークションが始まりました。今回のオークションも、引き続き氷川グループの主催となります。氷川グループの温かいお心に、改めて感謝申し上げましょう」

席からは絶え間ない拍手が響き渡った。氷川颯真は拍手の中で、立ち上がって、皆に一礼し、再び座った。

隣に座ってる橋本美咲は、目を輝かせながら、同じく拍手を送り、心の中で誇りを感じた。これが自分の夫なんだと。

みんなの拍手が止んだ後、競売人は続けて口を開いた。「挨拶はここまでにして、それでは、早速本題に入りましょう。

「まず最初の商品は『人魚の涙』、世界一のジュエリーデザイナー、ヘルがデザインしたサファイアのネックレスです」

水滴の形をした宝石が展示台に置かれた。

壇下の橋本美咲は目を離すことなく見入っていた。こんな大規模なオークションに来るのは初めてで、最初の商品が既にこんなに豪華だとは思わなかった。後の品もきっと面白いものがたくさんあるに違いない。

そう思うと、橋本美咲の興味が一層高まった。

「このサファイアは涙や水滴の形に磨かれ、しかも純度は非常に高いです。世界中の有名な宝石の中でも、これに匹敵するものはございません。また、この品にはとある非常に華やかで美しい意味を持っております。それは、
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