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第179話

メディアたちが息をのんで見守った。一体誰なの?すると、細くて優雅な女性が、氷川颯真の手を借りて、車からゆっくりと降りてきた。

橋本美咲は百合の花のようなワンピースを着ていて、その上には星のような小さな真珠が散りばめられ、さらに隠し模様が織り込まれていた。

メディアたちが橋本美咲を見た瞬間、職業人としての本能が働き、手元のシャッターを押した。すると、橋本美咲のドレスの隠し模様が一瞬控えめな輝きを放ち、彼女を一層輝かせた。

メディアたちのカメラには、一枚の美しい写真が残った。写真の中の男性は背が高くハンサムで、普段は冷たい目つきが橋本美咲を見るときだけは温かくて柔らかかった。

女性の方はまるで花束から出てきた妖精のように、華やかで無邪気だった。見事なまでに似合う二人だった。メディアは目の前の光景に驚き、言葉を失い、シャッター音だけが響いた。

橋本美咲が車から降りた後、メディアのフラッシュに一瞬目がくらんだが、すぐに平静を取り戻した。

美咲は氷川颯真の手を取り、レッドカーペットを歩き始めた。周囲のメディアは、その女性が気品があって冷淡で、余計な言を話さないような方だと思っていた。しかし、実際には、橋本美咲は緊張で言葉が出てこなかっただけだった。

美咲は一歩一歩着実にレッドカーペットを歩いてるようだったが。実際は、もし氷川颯真が彼女の手を取っていなければ、転んでしまいそうだった。

橋本美咲と氷川颯真がオークション会場に入ると、メディアたちはようやく我に返った。彼らは手元の写真を見て、少し悲しげだった。

写真の中の男女は凄く美男美女で、よく似合っていたが。しかし、あんなに良いチャンスがあったのに、どうして彼らがどんな関係なのか聞きに行かなかったのかと悔やんだ。

もし夫婦なら、明日のトップニュースになるだろう。そうでなければ、適当に書けるわけがなかった。氷川グループは世界一の企業だから。適当に記事を書いたら、多分潰されちゃうだろう。

メディアたちは涙をこらえた。

彼らの予想通り、遠くからガードマンが勢いよくやって来た。終わった!きっと氷川グループの社長が、先ほど写真を削除するよう命じていたのだろう。

ガードマンが彼らの前に来た。「この方、先ほど我々の氷川社長と一緒に歩いていたのは彼の妻、橋本美咲です。彼女のことを氷川夫人と呼んでください」

そう言い終
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