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第178話

翌日、予定通りにオークションが始まった。様々な金持たちが自分の高級車から降り、柔らかな赤いカーペットを踏みしめて会場に入っていった。一方で、メディアは絶えず写真を撮り続けていた。

これは滅多に見られない大きなイベントだった。商業雑誌に登場するような金持たちが、一堂に会するのは珍しいことだったから。もう少し写真を撮っておかないと、もったいないじゃないか。

突然、遠くのメディアから騒ぎ声が聞こえてきた。

「みんな見て!あれは斎藤家のお嬢様の車じゃない?」

この一言で、すべてのメディアがまるで獲物の匂いを嗅ぎつけた猫のように、カメラをそっちに向けた。

遠くから一台の高級車がやってきて、そこから真っ赤なドレスを身にまとった女性が降りてきた。

斎藤家のお嬢様は今日も凄く華やかだった。真紅の衣装が彼女の雪のように白い肌を引き立て、黒い髪はゆるく巻かれて腰まで垂れ、赤い唇が非常に魅力的だった。

まさに人間の宝石と言える存在だった。

「聞いたところによると、斎藤家のお嬢様と氷川グループの社長は幼馴染で、彼の母親もこの斎藤家のお嬢様を凄く気に入っているらしいわ。もしかしたら、両家が縁組する可能性もあるよ」ある新聞社の記者が他の記者に耳打ちした。

この爆弾発言に、現場の記者たちは皆一斉に興奮し始めた。しかし、ある小さな新聞社の記者は少し躊躇して言った。「でも、氷川グループの社長は既に結婚していると聞いたけど、その相手は斎藤お嬢様ではないみたいよ」

多くの出版社の記者たちは一斉に白目をむいた。どこの田舎者だ?出処も分からない情報を、よくも口に言えたな。

皆が知る通り、氷川グループの社長は冷酷で、多くの女性に対して興味を示さない人だった。唯一親しい関係にあるのは、この斎藤家のお嬢様だけだった。

彼女以外に、氷川グループの社長が誰と結婚するというのだろう?

まるで記者たちの顔に泥を塗るかのように、氷川颯真がいつも乗ってた車が遠くからやってきた。

鋭い目を持つ記者たちは、すでにその高級車を見つけていた。一番にスクープを掴むため、先ほどのように斎藤お嬢様の居場所を公然と告げたようにではなく、彼らは、第一報を手に入れるために、静かに近づき始めた。

しかし、その方法の効き目も長くは続かなかった。氷川颯真の車がすぐにレッドカーペットの前に到着し、すべてのメディアの注目を集
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