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第186話

オークション会場で、斎藤貴美子はその封筒を手に入れて、まるで子供のように目を輝かせていた。今回の品を落札できたことで、お父さんに褒められたのは間違いないと確信していたし、先日落札したネックレス代もきっとお父さんが支払ってくれただろうと期待していた。

案の定、彼女が報告すると、斎藤俊彦は満面の笑みを浮かべ、

大いに喜びながら貴美子を称賛し、そのネックレス代も気前よく支払ってくれた。

斎藤は手にした封筒を大事そうにしまい込み、満足げに笑みを浮かべながら、

軽快な足取りで氷川のもとへと向かった。

オークションも終わり、ようやく彼と過去を振り返りながら話せた時間ができたのだ。

「氷川さん」

斎藤は艶っぽい笑顔を浮かべ、その瞳には自信が溢れていた。「お久しぶりね、お母さんもあなたに会いたがり。いつ家に来てくれます?」

氷川は、突然彼女に行く手を塞がれ、少し戸惑った様子で彼女を見つめた。

「うん、僕も伯母さんに会いたいです。時間ができたら、必ず伺います」

斎藤の笑みはさらに広がり、彼女は氷川さんが自分を好いていると確信し、得意げに美咲に視線を送った。

美咲は、突然投げかけられた挑発的な視線に驚いた。

彼女の目に何か問題でもあったのだろうか?

心の中ではそう思っていたが、表には全く出さず、冷静に斎藤に軽く頭を下げた。その態度が斎藤の怒りをさらに煽った。

「彼女は一体何を考えているのか?「私を馬鹿にしているのか?」と、斎藤は心の中で呟いた。

斎藤は怒りを込めて眉をひそめ、美咲を睨みつけた。

そして、斎藤は氷川に向き直り、疑問を抱きつつ尋ねた。「氷川さん、この方はどちらですか」

氷川はその時、まだ斎藤に美咲を紹介していなかったことに気づいた。

美咲を思い出し、自然と誇らしげな口調になっていた。「こちらが僕の妻です。まだ結婚したばかりなので、皆さんにお知らせする機会がありませんでした。どうかよろしくお願いします」

斎藤は、氷川が既に結婚していたという事実に打ちのめされた。

「何?「氷川が既に結婚していたというのか?「氷川の周りには、今まで女性なんて全くなかったのに。

「この女は一体どこから現れたのか?「氷川の側にいるべき女性は私一人だけなのに!」斎藤は、美咲を冷たく睨みつけ、嫌味を言い放った。「あなた、美咲と言います?これからはよろしくお願いし
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