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第184話

会場内は緊張感が高まり、参加者全員が目を赤くして競り合っていた。

価格は次々と跳ね上がり、

一億円、二億円、三億円と天井知らずだ。

美咲は目の前の光景に驚きを隠せなかった。

「こんなにも大袈裟なことになるなんて…ただの封筒じゃないの?」

彼女は隣の氷川に視線を向けたが、彼はあまり興味がなさそうに顎に手を当てていた。

少し躊躇したものの、美咲はついに聞いてしまった。「颯真、どうしてこんなに高額になるの?」

美咲の質問に、氷川は少し身を乗り出して真剣に答えた。「短く説明するね。丹波の国の皇族は非常に強大な権力を持っているんだけど、今回の問題は彼らだけでは解決できないみたいなんだ。それで外部の権力者の助けが必要になった。ただ、その助けを求める方法がちょっと変わっているんだよ」

美咲はますます混乱した。「助けを求めるのに、こんなに手間をかける必要があるの?

「普通に頼めば、多くの人が助けに来るんじゃない?」

氷川は首を振った。「丹波のやり方は特別なんだ。彼らは誇り高く、排他的だから、認めた相手としか協力しない。だから、このオークションは一種の選別なんだよ。誰が高い値をつけるかで、その人の実力がわかる。それでようやく彼らはその相手と協力することにするんだ。

「そして、一度丹波の国と協力すれば、彼らの富を手に入れるのは簡単になる。それが人々がこれほどまでに熱狂する理由だ」

美咲はすぐに理解した。

だが、彼女は隣に氷川の方に目を向けた。「颯真、あなたは入札しないの?」

「この場で一番の権力者は、あなたでしょ?」

それを聞いた氷川は少し眉を上げ、妻にそんなことを言われて、彼は少し嬉しそうな顔をした。軽く咳をして答えた。

「でも、僕は丹波の国の問題に興味がないし、僕の権力は彼らよりも上だから、得られるものは何もない。だから、この件には関与しないことにしたんだ。

「丹波の国もそれを分かっているから、こういう方法を取ってきたんだろう。

「さらに、今回のオークションは慈善目的のもので、落札された封筒の金額は全て慈善事業に使われるんだ」

美咲はその説明に納得し、静かに彼らの入札を見守ったことにした。

不思議なことに、夫の説明を聞いた後、美咲はその封筒を見つめながら、何とも言えなかった感覚を覚えた。

その封筒の模様や紋章が、どこかで見覚えがあるように感
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