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第157話

黒崎拓也は信じられない様子で橋本美咲を見つめた。彼女は本当に助手に警備員を呼ばせたとは!

「いや、ちょっと待て」

黒崎は外に向かおうとする助手を止めた。助手はただの女の子なので、黒崎拓也のような身長180センチの大男に立ちはだかれ、しかも顔が険しく、怒りがこもったのを見て、恐れて立ち止まった。

今、黒崎拓也はドアを塞いでいて、助手は出て行けなかった。

彼女は唾を飲み込み、思わずこのまま駆け出してしまおうかと考えた。しかし、黒崎拓也が怒りで暴力を振るいそうな気配を感じ、一歩後退し、橋本美咲の前に立ちはだかった。

警備員は後で呼べばいい。もしこの男が美咲さんを殴ろうとしたら大変だった。

自分がここにいれば、美咲さんを守れるかもしれない。しかし、もし警備員を呼びに行っている間に、この男が暴れたら、美咲さんが怪我を…

以前、氷川社長から橋本美咲をしっかり見守るように言われたことや、氷川颯真がくれた謝礼金を思い出すと、助手は決意を固めた。氷川社長に美咲さんを見守ると約束した以上、反故にはできないわ。

橋本美咲は逆に自分の前に立つ助手の姿に少し驚いていた。美咲は氷川颯真が、助手に彼女を守るように、指示したことを知らなかった。ただ、この助手がとても忠実で、彼女に対して非常に親切だと感じていた。

橋本美咲は心の中で、後で助手に昇給してあげようと考えながら、冷ややかな目で黒崎拓也を見つめた。

「どういうつもりなの?もし黒崎グループのことなら、私に言う必要はないわ。この件は黒崎グループの株式を買い取った人と話すべきよ。

「それと、さっき私に謝ったことについて、残念ながら、受け入れられないわ」

橋本美咲は、以前、黒崎拓也が橋本月影と結婚したとき、自分に向けたあの冷たい目と、四年間の裏切りを思い出した。

橋本美咲の心は氷のように冷たくなった。「どんな勘違いをして、私があんたを許せると思っているのか理解できないわ。しかし、今のところ、私はとても快適に過ごしているし、夫婦の関係もとても良好よ。

「もし言いたいことが、それだけなら、今すぐ私の会社から出て行って。まだ仕事があるの」

橋本美咲の決然とした態度が黒崎拓也を激怒させた。彼の内なる男尊主義とプライドが、美咲が彼にこんなことを言うのを許さなかった。

黒崎は無意識に橋本美咲に近づき、真っ赤な目をして、美咲を掴も
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