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第158話

彼女はもう退くことができなかった!橋本美咲の目が大きく見開いた。今どうすればいいの?!

彼女は初めて黒崎拓也が大人の男性であり、自分がただの小柄な女性に過ぎないことに気づいた。

橋本美咲は恐怖に震えながら目の前の黒崎拓也を見つめていた。側には昏倒した助手が倒れていた。今どうするべきか?!

彼女は目を閉じ、頭の中は混乱していた。

「やめろ!」

馴染みのある声が黒崎拓也の後ろから聞こえた。すぐに黒崎は誰かに押さえつけられた。

橋本美咲はまだ目を強く閉じていた。強い恐怖で、目を開けることを忘れていた。

しばらくして何の動きもないことに気づいた橋本美咲は、ようやく少しずつ正気を取り戻した。

彼女は心臓がまだドキドキしているのを感じながら、氷川颯真によって地面に押さえつけられていた黒崎拓也を見つめた。

恐怖に震える橋本美咲はその場で十五分間も動けなかった。その後、ようやくゆっくりと心の中の恐怖を抑え込むことができた。

美咲は地面に座り込んで、手足に力が入らなかった。隣の氷川颯真は凄く心配そうに橋本美咲を見つめていた。きっとすごく怖がっているに違いない。ちくしょう!氷川颯真は、自分が押さえつけていた黒崎拓也を、鬼気迫る眼差しで睨みつけた。

全部、コイツのせいだ!「警備員!警備員!」颯真は大声で叫んだ。

オフィスの外の人々はようやく異変に気付いた。彼らによって呼ばれた警備員が、慌てて駆け上がってきた。そして、目にしたのは、荒れ果てたオフィスと、氷川颯真に押さえつけられていた黒崎拓也、後は床に昏倒した助手と、恐怖に震える橋本美咲だった。

警備員の額には冷や汗が滲み出た。どうしてこんなミスをしてしまったの!

「何をぼーっとしているんだ、早く手伝え!」

氷川颯真が叫ぶと、警備員は慌てて颯真の側に駆け寄ったが。どうしたらいいか、わからず立ち尽くしていた。

氷川颯真は冷たい視線を向けた。「役立たずが!

「ここを押さえるんだ。全力で押さえつけて、絶対逃がすな。聞こえたか?!」

氷川颯真の指示で、警備員はようやく黒崎拓也を完全に制圧した。

ようやく手が空いた氷川颯真は、すぐに橋本美咲の側に駆け寄り、彼女を支えてゆっくりと立たせた。颯真の顔には心配と悲しみが溢れていた。

「奥さん、大丈夫か?どこか怪我とかは?」

自分の妻が無事であることを確認すると、氷川
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