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第162話

「これは言うことを聞くかどうかとは無関係だろう。ましてや、黒崎拓也が勝手に私の会社に侵入し、私の助手を傷つけ、さらに私に手を出そうとしたんだよ。それでも、私に黒崎を助けに行けと言うの?」

橋本美咲の目には軽蔑の色がよぎった。今回の黒崎拓也、彼女は絶対に助けに行かないつもりだった。アイツを刑務所の中に放っておけばいいわ。

「ただの助手じゃないか?」

橋本父は凄く苛立っていた。彼は自分の長女を見てますます怒りを感じた。

「助手が妹婿より大事なのか?それに、お前は以前、拓也のことが好きだっただろう。二人が結ばれなかったとは言え。

「でも彼は今やお前の妹婿だ。妹のことをもう少し考えてやれないのか?しかも、月影ちゃんは今も精神病院にいるんだぞ」

幼い頃から手の中で大事にしてきた次女のことを思い出すと、橋本父は心が痛んだ。

「お前は一度も見舞いに行かなかった。どうしてもダメなら、月影ちゃんを連れ出してもいいと思うがな。お前はそれでも姉なの?」

いいわね!さすがは橋本家の人間だ。厚かましいにも程がある。こんなことをよくも言えたものだ。どの面下げてその話を持ち出せたのかな?

黒崎拓也は自分と付き合っている間に裏切り、橋本月影と関係を持った。

橋本父はそれを当然のように言い放った。彼女はお前の妹だ。どうしていい姉になれないんだ?

本当に呆れた!

今回、橋本美咲は、前回の教訓を生かし、橋本父とこれ以上話すつもりはなかった。彼女は冷淡にオフィスの外へ向かって叫んだ。「警備員を、すぐに警備員を呼んで」

前回の黒崎拓也の件で、外の人々は凄く敏感になっていた。だから、橋本美咲が警備員を呼ぶのを聞くや否や、すぐに動き出した。そして、警備員も迅速に上階に来た。

彼は橋本美咲のオフィスのドアを開けると、目に入ったのは美咲とその前に立つ一人の男だった。その男が橋本社長が追い出そうとしている人物だろうと考えた。

彼は数歩前に進み、礼儀正しくも拒否できないような口調で橋本父に言った。「この方、どうか我が社からご退去ください。うちの社長はあなたを歓迎していません」

橋本父は信じられない様子で橋本美咲を見た。まさか本当に自分を追い出すとは。

「何を言っているんだ?お前らの会社の社長は儂の娘だぞ。父親が娘を叱るのは当然のことだ。他人が口を出すことではない」

警備員は眉をひそめ
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