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第167話

橋本美咲は茫然と氷川颯真を見つめ、無意識に答えた。「オークションに参加する?でも、特に欲しいものはないわ」

氷川颯真は心の中でため息をついた。他の人ならこんな良い話に喜んで応じたのに、自分の妻だけはその言葉の意味を永遠に理解してくれなかった。

たとえ妻が生活の中で何も不足していないとしても、ブランドバッグ、ダイヤモンド、宝石、アンティーク家具のどれか一つは、彼女の好みに合うはずだろう。

しかし、いつもこうしたものを欲しがらず、むしろ生活の中で彼をあれこれと世話してくれた。せいぜい、疲れた時に彼に甘えてくる程度だった。

それは良くないぞ、妻よ!氷川颯真は目を伏せ、少し不満そうにした。家にいても、自分が夫として凄く無力だと感じていた。

「奥さんよ、たとえ君が特に欲しいものがないとしても、オークションには面白いものがたくさんあるんだぞ」

それを聞いて、橋本美咲は興味津々になった。「どういうこと?

「オークションには私が好きな本があるの?」

氷川颯真の顔には微妙な表情が浮かべた。妻が興味を持つ本は、普通の書店でも売っていたし。たとえ希少本であっても人を使って探せば手に入る。しかし、こうしたものは一般的にオークションでは出品されないわ。

氷川颯真の表情を察して、橋本美咲は少しガッカリして頭を下げた。「オークションにはそんなものはないのね。じゃあ何のために行くの?」

氷川颯真は頭を抱えて橋本美咲を見つめた。

「オークションでは宝石やダイヤの指輪、アンティークなど、貴重なものがたくさん出品しているんだ。奥さんが思いつく限りのものが全部揃っているよ」

橋本美咲はぼんやりとした。氷川颯真が言いたいのは、オークションにはたくさんの高価なものがあるということだった。

「奥さん、そこに行って何か買ってみない?気に入ったものなら何でもいいわ」

ああ、これ…

美咲は唾を飲み込んで、氷川颯真の無駄遣いを改善する必要があると思った。

「颯真、私は高級な宝石が好きではないし、高価なものにも興味がないの。すごく気に入ったものじゃない限り、普通はそういうものには興味がないんだ。もし本当に何か高価なものを買うとしても、千夏と一緒に高級デパートに行って色々見てから、買うことにしてるわ」

言い換えれば、必要なものは自分で買うから。氷川颯真に気を使わせる必要はないということだっ
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