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第173話

氷川颯真は顔をしかめながら、橋本美咲の前からスケッチを取り上げて、リチャードの顔に投げつけた。「ダメだ。このスケッチは絶対にダメだ。もう一度デザインし直せ」

リチャードは困惑した様子で、自分の顔からスケッチを取り外した。まるで初めて氷川颯真を知ったかのようだった。「どうしてダメなんだ?このスケッチは結構いい感じだと思うんだが?」

リチャードは非常に納得がいかなかった。

約束したじゃないか。服は全部彼に任せて、彼のセンスを信じるって。なんで描き終わったばかりなのに、もうダメだと言うんだ?

氷川颯真は冷たい目でリチャードを一瞥した。「たったの20分で描いたスケッチに何がいいんだ。もっと本気で描け」

ちょっと待って。さっきはそんなこと言ってなかったじゃないか!

橋本美咲もますます混乱していた。彼女はこの服が結構良いと思っていたから。

たとえ二十分しか使っていなくても、国際的なファッション要素が全て取り入れられていた。正直言って橋本美咲はとても気に入っていた。

でも、橋本美咲は氷川颯真の険しい顔をちらりと見て…

氷川颯真がそう言うのなら、反対しないことにした。

イタリア出身の男は日本人男の気まぐれな好みに非常に困惑していた。彼は悔しそうにそのスケッチを脇に置き、新しいスケッチを描き始めた。

描いている間、リチャードはますます集中した。目の前の二人の気難しい客を満足させることを誓った。

描き終えた後、彼は自信満々でそのスケッチを氷川颯真と橋本美咲に渡した。美咲がそれを受け取って見た。

彼女は凄く驚いた。そこに描いてあるドレスは上下セットのスカートのデザインで、上半身は凄くキレイなパフスリーブに素敵なパールの装飾が施されていて、下半身は相変わらずスカートで、膝を少しだけ超えていた。上下セットのスカートは二本のリボンでつながっていて、リボンは裾にふわりと垂れ、清楚で可愛らしさがあった。

橋本美咲は、このドレスを着てパーティーに行けば、その場にいるすべての既婚奥様たちを圧倒し、一番魅力的で若々しい存在になるだろうと想像した。

橋本美咲はとても満足していたが、氷川颯真の考えは違っていた。颯真は無表情でスケッチをリチャードに返し、描き直すように示唆した。

「何?」

リチャードは颯真よりも無表情になった。どうしてこんなに理不尽なんだ?

明らかに良い感じ
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