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第172話

「もういい、本題に入ろう。僕の妻のドレスをどうするつもりだ?」

氷川颯真は強引に話題を本筋に戻した。橋本美咲も気を引き締め、今日の本題が来たことを理解した。

凄くプロ意識の高いリチャードは、だらしない態度を収めると、専門家の目で橋本美咲を観察した。見れば見るほど、驚嘆の声を上げた。

「君の奥様のスタイルは凄く良いね。アジア女性の中では完璧と言えるほどだ。肌も凄く白く、特にその清らかで美しい姿勢は、本当に素晴らしい」

リチャードにこう評価されたにもかかわらず、橋本美咲の心には一切の不快感はなかった。それは、リチャードの目が澄んでいて、態度が真剣であったからかもしれなかった。

彼は本当に心から橋本美咲のために、完璧な服をデザインしようとしていた。

橋本美咲の容姿について述べ終わったリチャードは、少し頭を下げて考え込んだ。暫く、彼は自信に満ちた表情で顔を上げた。「氷川颯真。奥様のドレスのデザイン、大体イメージが固まった。さっき言った通り、百合の花は奥様に非常に似合う」

氷川颯真は眉を上げた。「分かった。お前の言う通りにしよう。お前のセンスには信頼をしているからな」

橋本美咲は彼らのやり取りをただ聞いていた。ドレスの設計案とか、使用する大体な要素とか。

美咲はしばらく黙っていた。少し悲しく、また少し不満に感じた。誰も彼女の意見を聞いてくれなかったの?これは私が着るドレスなのに。

傍にいた氷川颯真は橋本美咲の気持ちに気付くと、彼女の頭に手を置いて撫でた。

口調は慰めに満ちていた。「心配しないで。美咲の意見を無視しているわけじゃないんだ。ただ、リチャードは世界で最高の服飾デザイナーなんだ。パリで数多くの展示会を開いていた。彼に全て任せても問題ないわ。きっと奥さんに最も似合う服をデザインしてくれるよ」

氷川颯真の説明を聞いて、橋本美咲も徐々に安心した。颯真はいつも彼女のことを思って行動していたから、今回も例外ではなかった。そんなに気にしなくていいわ。出来上がったドレスが素敵ならば、それでいいじゃない。

「ドレスのデザインが出来上がったよ。見てごらん」

その言葉を聞いて、橋本美咲は驚いた。こんなに早く?まだ20分も経っていないのに、もうドレスのデザインが完成したの?

橋本美咲は突然、先ほどの自分の判断に疑問を抱いた。半信半疑で前に進み、リチャードが描い
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