共有

第165話

氷川颯真は橋本美咲の視線に気づいた。「どうしたんだ?奥さん、どこか具合が悪いの?」

颯真は心配そうに橋本美咲を見つめた。

橋本美咲は顔を真っ赤にして、何を言ったらいいのか分からなかった。まさか、ここに座って何を話せばいいのか分からない、なんて言えるわけがなかった。

しかし、実際には最初に氷川颯真に電話をかけて、迎えに来てもらったのは美咲だった。

この時の橋本美咲は、実は自分が氷川颯真に電話をかけたのではなく、颯真の方から先に電話がかかってきたことをすっかり忘れていた。

橋本美咲は首を振って、どもって氷川颯真に言った。「ただ少し疲れただけ」

氷川颯真は眉をひそめ、意味深に笑いながら妻を見つめた。「ああ、ただ疲れただけか?」

颯真のこの言葉は長く、深い意味を込めて言われた。橋本美咲の顔はますます赤くなった。どうしよう。何をすればいいのか全くわからなかったわ。

氷川颯真はそんな橋本美咲を見て軽く笑い声を上げた。まあ、妻をこれ以上からかうのはやめておこう。からかいすぎるのも面白くないから。

颯真は橋本美咲の頭を肩に寄せ、優しく宥めるように言った。「疲れているなら、少し寝ていればいいさ。寝ている間に家に着くわ」

橋本美咲は氷川颯真の肩に寄りかかった。なぜこんな状況になったの?氷川颯真の優しい言葉に心が安らぎ、橋本美咲はおとなしく目を閉じた。最初は眠くなかったが、知らないうちに眠ってしまった。

目が覚めると、美咲は自分のベッドで眠っていて、布団もきちんと掛けられていたことに気付いた。

橋本美咲は混乱した。こんなに早く帰ってきたの、さっきまで車にいたじゃない?どうして突然ベッドにいるの?ガチャッ、ドアが開く音がして、氷川颯真が入ってきた。

氷川颯真は橋本美咲を見て言った。「奥さん、もう起きたのか。まったく、寝坊助だな。3時間も寝てしまったんだぞ」

橋本美咲は恥ずかしそうに口をとがらせ、氷川颯真に文句を言った。「そんなに長く寝ちゃったの、どうして起こしてくれなかったの?」

氷川颯真はそんな橋本美咲を見て大笑いした。「奥さんがあまりにも気持ちよさそうに寝ていたから、起こすのが申し訳なくてね。奥さんが自分で起きるまで待とうと思ったんだ」

橋本美咲は不満そうに顔を背けた。こんなに寝てしまったから、夜はきっと眠れないわ。

氷川颯真はニコニコ笑いながら、数歩
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status