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第155話

その姿、橋本美咲は見覚えがありすぎた。だからこそ、今の彼女はただ胃がひっくり返るような感じで、少し吐き気を覚えた。

美咲は眉をひそめて視線を自分の助手に移した。隣の助手は汗だくで立っていて、橋本美咲の視線に気づくとすぐに謝罪した。

「申し訳ございません、美咲さん。この黒崎さんが無理やり入ってきて、どうすることもできませんでした」

橋本美咲は少し無力感を覚えたが、助手を責めはしなかった。もし黒崎拓也が強引に入ってこようとしたら、助手にはどうしようもなかっただろう。

放っておかれた黒崎拓也は不満げに咳払いをし、目の前の人の注意を引こうとした。

橋本美咲は冷たく黒崎拓也に言った。「何の用があって来た?」

その一言に、黒崎拓也はその場で動けなくなった。橋本美咲がこんな態度を取るとは思ってもみなかったので、面子が立たなかった。

黒崎はしばらくその場に固まったが、ついに自分の来た目的を橋本美咲に伝えることにした。

「橋本美咲、俺の会社のことなんだけど…」

黒崎拓也の言葉を半分聞いただけで、橋本美咲は黒崎が何を言いたいのかすぐに分かった。しかし、何となく察しているからといって、そんな面倒なことに巻き込まれたくはなかった。そのため、黒崎の話を遮ることはなかった。

黒崎拓也は続けた。「俺の会社のこと、お前が氷川社長に頼んだのだろう?」

橋本美咲は可笑しくてたまらなくなった。何を言いに来たのかと思ったら、このことだったとは。

そもそも、たとえ彼女が氷川颯真に頼んだとしても、だから何だというの?ビジネスの世界はまさに戦場であり、いつどこで攻撃されるかわからないものだわ。

敵が攻撃してくるときに、「ごめんね、これから攻撃するから。準備しといてね」なんて言ってくると思ったか?

冗談でしょ?!

黒崎拓也、甘すぎるわよ!

橋本美咲は冷笑を浮かべながら、その場に立っていた。何も言わなかった。

逆に黒崎拓也は非常に居心地が悪くなった。彼は誰かに頭を下げることなどあっただろうか?

特に目の前の人物、かつて彼と一緒にいた橋本美咲。

彼の言うことを何でも聞き、何でも彼の言いなりになる橋本美咲。

黒崎拓也はこんな経験をしたことがなかった。

「もし黙っているなら、黙認と見なすからな」

黒崎拓也は必死に言葉を続けた。

橋本美咲は白目をむいた。「そもそも、あんたが言っ
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