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第137話

風間鈴音は目を伏せ、ため息をついた。「その人は私の親友です」

その一言で木村社長は全てを理解し、思わず心の中でため息をついた。やはり世の中は残酷だね。そして、これ以上この話題を続けるのはやめた。目の前の若者の傷をえぐりたくはなかったから。

「もし他にご用がなければ、橋本社長、木村社長、失礼します」

風間鈴音は目の前の二人の社長にお辞儀をした。橋本美咲は少し心配そうに鈴音を見て、手を振って下がらせた。

そして木村社長に向き直って言った。「木村社長、こちらの件ですが…」

木村社長は手を振って言った。「わかったわ。

「この漫画について、彼女が提供した原稿を見る限り、彼女が創作したものだと信じられる。しかし、月見会社については、橋本社長、どうするつもりなの?」

橋本美咲は一度目を閉じ、再び開けたときには決意の表情を浮かべていた。「うちの美咲ちゃんの漫画会社は、簡単に侮られるわけにはいきません。彼らがうちの漫画を盗作したことには、必ず代償を払わせるつもりです。弁護士を通じて知らせを送りましたので、来週の火曜日、つまり4日には裁判が開かれる予定です。

「それまでに、私たちはさらに多くの証拠を集め、月見会社を完全に打ち負かすつもりです」

木村社長は目の前の若い女性を感心して見つめた。「わかった。橋本社長のその言葉を聞いて、安心したわ」

橋本美咲は木村社長をちらりと見た。「では、木村社長、お手元の書類にサインしていただけますでしょうか?」

木村社長は笑って首を横に振った。「いいえ、この書類はまだサインするつもりはない」

橋本美咲の心は一瞬沈んだが、顔の笑みは変わらなかった。「では、木村社長のご意向は?」

木村社長はテーブルの上を指で無意識に叩きながら、橋本美咲には狡猾に見えた笑顔を浮かべていた。

「橋本社長が勝訴したら、この書類にサインするわ」

この古狐め!橋本美咲は心の中で悪態をついた。

「分かりました。では、この件はこれで決まりですね」

木村社長はうなずいた。

「それでは、木村社長。うちの会社を案内させていただきます」

木村社長は断ることなく、橋本美咲の後をゆっくりとついて、漫画会社全体を見て回った。

橋本美咲は一日中てんてこ舞いだったが、ようやくこの大物を送り出すことができた。相手が去った後、美咲はほっと息をつき、額の汗を拭った。

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