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第144話

その時、橋本美咲は氷川颯真と稲山明弘と話をしていたが、電話のベルがその和やかな雰囲気を打ち破った。

橋本美咲は電話を出た。「もしもし?」

「もしもし、美咲ちゃん。会社最近どうしたの?急に裁判するなんて」

電話の向こうからは緒方始の声が聞こえてきた。

橋本美咲の目には一瞬、悟りの色が浮かんだ。きっと月見会社が緒方始に接触したのだろう。美咲は電話の向こうの友人を笑顔で安心させた。

「こっちは大丈夫、事件のこともすでに処理済み。この訴訟は絶対に勝つから、心配しないで」

二人は少し話した後、電話を切った。稲山明弘たちは彼女が電話を切るとすぐに訊ねた。「電話をかけてきたのは誰だ?

「こんなに早く、君のところで問題が起きたのを知ったのか?」

橋本美咲はしばらく考えた後、氷川颯真たちに真実を話すことにした。

「電話をかけてきたのは私の友人で、街で一番の弁護士よ。多分、橋本家が彼に弁護を頼んだ。しかし、彼が断った。それで心配になって、電話してきたのだと思う」

稲山明弘―……

氷川颯真―……

だから男は本当に心配性なんだ。全然助けを必要としていなかった。橋本美咲一人でもこの問題を解決できたのに。

一方、緒方始に断られた橋本家は、すぐに別の弁護士を探してきた。

時間が瞬く間に過ぎ、すぐに開廷日がやってきた。

橋本美咲は原告側に立ち、橋本月影は被告側に立っていた。

あの結婚式以来、この血の繋がりのない姉妹は、再び公衆の面前で互いに敵意を示した。

裁判官の槌が落ちる音とともに、開廷となった。

被告側に立ってた橋本月影の心にはイライラが募っていた。橋本美咲、このアマが!

今までこんなに恥をかいたことはないわ!私を訴えるなんて。今日は絶対に立ち直れなくしてやる!

月影は弁護側の弁護士を一瞥すると、得意げな表情を浮かべた。街で一番の弁護士である緒方始は彼女の弁護を断ったが…

しかし、彼女を大切に思う黒崎拓也は、他の場所から高額な費用をかけて弁護士を呼んだ。

今回来た弁護士は世界でトップ50に入るほどの凄腕で、彼が担当した裁判の100件中、98件が勝訴だった!

橋本月影は再び橋本美咲側の弁護士を見た。

稲山明弘は暗灰色のスーツを着て、きちんとネクタイを締め、金縁メガネをかけて、静かに立っていた。

見たことのない人物だった。橋本月影は眉をひそめた。あ
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