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第149話

橋本月影はびっくりして立ち尽くした。彼女の心に不吉な予感が涌き上がった。「たっくん、それはどういう意味?」

黒崎拓也は不機嫌そうに白目をむいた。「今の黒崎グループは生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされているんだ。お前に構っている暇なんてないんだよ、分かったか?」

最後の望みが打ち砕かれ、橋本月影は床に崩れ落ちた。普段の完璧な姿勢は全くなくなってしまった。

ありえない!たっくんの会社が倒産するなんてありえない!

彼の会社はこの街で一番大きな会社で、橋本家を除けば、誰も彼に逆らうことはなかったはずだ。

黒崎家は誰にも恨みを買っていないのに。待って!一瞬の閃きが月影の脳裏をよぎった。橋本美咲の顔と、彼女が嫁いだあの旦那が心に浮かんだ。

橋本美咲!絶対、橋本美咲だ!

月影の顔は憎しみに歪んだ。

橋本美咲は私が幸せになるのが気に入らなかったの?

黒崎拓也は嫌悪感を露わに橋本月影を見ていた。神経が尖っていた月影は、黒崎の視線を瞬時に捉えた。

「たっくん、どうしたの?私を嫌っているの?」

彼女は尖った声で黒崎拓也に向かって叫んだが、そんな反応が黒崎の嫌悪感をさらに増幅させた。

自分は目が曇っていたのか。この女のどこが橋本美咲より良いのか。普段は多少の優しさがあるが、今のこの狂気じみた姿…彼は心の中で首を振った。

「帰りなさい。君の顔を見たくないんだ」また同じ言葉を言った。

会社の問題で元々焦っていた橋本月影は、黒崎拓也のその言葉で完全に糸が切れてしまった。

橋本月影は黙って地面から立ち上がり、服の埃を払い、静かに黒崎拓也のオフィスを出て行った。

橋本月影のその姿を見て、黒崎拓也の心には再びわずかな罪悪感が芽生えた。本当は月影ちゃんはとても優しいのだ。自分が怒鳴ったのが悪かった。後で帰ったらちゃんと謝ろう。

しかし、今の橋本月影はすでに狂っていて、黒崎拓也の謝罪を聞く気は全くなかった。

黒崎グループを出た橋本月影の目には、憎しみが宿り、顔は歪んでいた。月影はもはや何も聞こえなかった。頭の中は、黒崎拓也が彼女を嫌って、浮気性で彼女を捨てようとしているという考えでいっぱいだった。

そして、それは橋本美咲が仕組んだものだ!

黒崎拓也が言った黒崎グループが危機に瀕しているという言葉、彼女は信じただろうか?月影は元々自分の利益のためなら、何でもする利己的な
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