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第145話

最後には、橋本月影の顔が歪んでしまった。世界のトップクラスの弁護士じゃなかったの?どうしてこんな裁判一つさえ勝てなかったの!

ところが、弁護を担当している弁護士も心の中で悪態をついていた。この女は頭が少しおかしいじゃないか。自社の作家が他人の漫画を盗作してるのに、公開日時も毎回相手の後だったとは。

偽証するにしても、せめてそのウェブサイトを閉鎖するべきだった。こんな状況で裁判に勝てるわけがないだろう!

裁判官がハンマーを叩いて裁判の終了を告げたとき、その弁護士は腹の中の腸を吐き出さんばかりに後悔していた。

黒崎家からのはした金のために、橋本月影の裁判を引き受けるべきではなかった。今となっては、業界中の人々が彼が悪人を弁護した上に、そんな馬鹿げた理由を使ったことが知れ渡ってしまうだろう。これじゃ、この業界ではどうやってやっていけるんだ!この裁判は、こんな中途半端な結末で終わってしまった。

橋本月影が歪んだ顔で被告席から降りてきたとき、ちょうど無表情で降りてくる橋本美咲と出くわした。

月影は歯を食いしばり、橋本美咲の前に進み出た。

「お姉ちゃん、私…」

そう言うと、月影の目から涙が零れ落ちた。

橋本美咲は橋本月影の見事な演技に、驚かずにはいられなかった。

彼女はなぜ会社を経営しているの。川劇を演じたほうがいいわ。思うに、彼女の変面の技術は、世間の役者たちもかなわないだろう。

すごいわ。涙は流れるし、笑顔もすぐに消せる。

「何が?」

橋本美咲は橋本月影の言葉を遮った。月影にこれ以上何も言わせてはいけなかった。気分が悪くなるようなことを言うかもしれない。だから彼女の口を塞いだ。

しかし、橋本月影は全く気にしていなかったようで、涙を拭きながら弱々しく橋本美咲に言った。「ごめんね、お姉ちゃん。私、本当にうちの会社の人が、あなたの会社の漫画を盗作するとは思わなかった。てっきり…」

橋本美咲は頭を抱えた。またかよ、あの猫被りのような言葉が。

しかも、橋本月影のこの態度は陪審員たちの注意を引いた。同時に何台かのカメラがこちらに向けられた。

なぜカメラがあるのか聞かないで!

前回、氷川颯真が橋本美咲を連れて、結婚式をめちゃくちゃにした以来、橋本姉妹に何か動きがあると、メディアどもは血眼になって食いついてきた。ましてや今回は公開裁判だった。

元々、メ
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