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第146話

橋本美咲は橋本月影に背を向けたまま、裁判所をまっすぐに出て行って、自分の家に帰ろうとしていた。彼女は月影の歪んだ顔を全く見ていなかった。

美咲が見ていなかったとしても、現場のカメラはその場面をはっきりとビデオに記録していた。メディアはまるで肉を手に入れた狼のように満足して、自分たちの出版社に帰っていった。

帰ったら良いニュースが書けるぞ!翌朝一番、橋本姉妹が公然と対立し、裁判を起こしたニュースが大々的に報じられた。

ニュースに映っていた自分の歪んだ顔を見て、橋本月影の心はますます憤りを感じ、手に持っていた携帯を粉々に叩きつけた。そして、急いで会社の人に連絡し、ゴシップサイトにそのトップニュースを取り下げるよう通知させた。

しかし、そのニュースはすでにネット全体に広がっていて、ニュース記事を取り下げるのは大金がかかることだった。

ましてや、そのニュースを見るべき人たちはすでに見てしまった。橋本グループの広報部がウェブサイトのニュースを完全に削除した時には、もう手遅れだった。

その行動は、人々の心中にある考えをさらに確信させた。彼らは橋本月影の会社についてあれこれと議論し始めた。

同時に、橋本月影の会社の信用は大きな打撃を受けた。元々、月影の会社と協力するつもりだった多くの相手が、次々と投資を撤回した。株価も下がり続けた。

今の月見会社がまだ倒産していないのは、おそらく黒崎グループの強力な資金支援のおかげだろう。

橋本月影は今、まるで熱い鍋の上のアリのように焦っていた。

一方、橋本美咲は橋本月影のこの状況を知って、心は複雑だった。

嬉しいのか?

元々は嬉しいはずだった。何しろ、橋本月影は最初から彼女に多くの面倒をかけたのだから。

しかし、今は全くその喜びを感じず、むしろ心には一抹の悲しみを感じていた。

橋本美咲はため息をついた。手元の書類に再び没頭したが、すぐに氷川颯真に引っ張られて行った。

氷川颯真は不満げに橋本美咲を見つめた。「もう家にいるんだから。どうしてまだ書類を対処しなきゃならないの?最近ずっと会社のことで忙しくて、僕と一緒に過ごしてくれないじゃないか」

そう言いながら口をとがらせ、子供っぽく橋本美咲に甘えた。

橋本美咲は困ったように氷川颯真を見つめた。「私、自分の会社を大きく強くすると言ったわよね?努力しないと、その目標は達
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