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第143話

この時になって初めて、橋本美咲は、稲山明弘が敏腕弁護士で、しかも一度も敗訴したことがない敏腕弁護士であることを信じた。

正直、どうして人はこんなにも変わるんだろう。多分、彼の魅力でしょ。橋本美咲は心の中でそう考えながらも、顔には真面目な表情を浮かべていた。

美咲は机の上の料理を人に片付けさせると、以前に風間鈴音からもらった3冊のノートを取り出した。

「これらは、うちの作家がその漫画を描いていた時のすべてのインスピレーションと記録です。相手のインスピレーション記録よりもはるかに詳細であることを保証します」

稲山明弘は眉をひそめてため息をついた。「これだけでは不十分だ。誰が盗作で、誰が被害者なのかを説明することはできない」

橋本美咲はうなずいた。「知っています。しかし、この裁判は絶対に勝ちます」

稲山明弘は驚いて橋本美咲を見た。彼が美咲が持ち出した証拠を見たとき、この裁判の難しさを厳しく感じていた。証拠がこれだけなら、たとえ敏腕弁護士でも黒を白に変えることはできないと思った。

だからこそ、彼は橋本美咲の自信がどこから来たのか凄く興味があった。橋本美咲はため息をつき、ウェブサイト上の月見スタジオのあの漫画を開くと、上の日付を指して言った。「彼女の掲載日、各話はすべて風間鈴音が漫画を描き終えた後に掲載されています。誰が誰の模倣なのか一目瞭然です」

橋本美咲の説明を聞いた後、明弘は顔いっぱいに疑問符を浮かべていた。彼は手に持っていた書類を閉じ、信じられない表情で氷川颯真を見た。

「これがお前が俺に頼んできた裁判なの?

「そもそも俺が出る必要なんてないでしょ?」

橋本美咲はため息をついた。「だから言ったでしょ。颯真は心配しすぎなんだよ」

この裁判で心配するべきなのは橋本月影だっただろう。

氷川颯真は食卓の反対側に座り、わずかに目を引き付けながらも、二人の言葉には反応しなかった。

「たとえこの裁判が確実に勝てるとしても、予備プランを作っておくべきだ。万が一、相手が死者を蘇らせるような弁護士を雇ったらどうする?僕はただ心配しているだけだ」

橋本美咲は言い返せず、いっそのこと、黙ることにした。

稲山明弘はその様子を見て苦笑した。

明弘は机の上の3冊のノートをすべて自分の横に持ってきて、その後ウェブサイト上の漫画のスクリーンショットを保存した。

「い
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