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第136話

ビジネス界の古狐である木村社長が見抜けないはずがなかった。彼が橋本美咲に提供したこの書類を、美咲は正しいとは思っていなかった。だからこそ、彼女はそんなに冷静でいられたのだ。

木村社長の心には自然と好奇心が湧いてきた。「橋本社長の様子を見ると、自分が有した漫画の作者こそがオリジナルの作者だと確信しているね。しかも、その答えに自信があるようだな」

橋本美咲は目の前の書類を閉じ、木村社長を真剣な表情で見つめると、確信を込めた口調で言った。「もちろん自信があります。この書類では全く納得できません。ここに記載されている証拠は全て、うちのあるマンガ家の作品を盗作したものです。理由については、その作者から直接説明させます」

そう言うと、美咲はドアの外に向かって声をかけた。「鈴音、入ってきて」

外で待っていた風間鈴音は橋本美咲の声を聞くと、すぐには入らず、まずは会議室の外で深呼吸をした。全身をリラックスさせてから、ドアを開けて入った。

鈴音は会議室の二人に向かって一礼した。「橋本社長、木村社長、こんにちは。私はこの漫画の原作者、風間鈴音です」

橋本美咲は目の前の風間鈴音を見て少し驚いた。何しろ、普段の彼女は、どちらかというと内向的なタイプだったから。こんなにも堂々としていて、目に強い意志を宿していた姿は珍しかった。しかし美咲はすぐに表情を引き締めた。

目の前にいたのはビジネス界の古狐だった。少しでも油断を見せれば、目の前の木村社長に隙を突かれる恐れがあった。

美咲は冷静を装いながらも、心の中では密かに不満を言っていた。古狐どもめ、本当に手強いね。自分も将来こうなるのか?幸いなことに、木村社長は風間鈴音に目を奪われていて、橋本美咲の表情には気づいていなかった。彼は鈴音をじっくりと見つめ、思慮を巡らせた。

この作家はとても落ち着いた雰囲気を持っていて、普段は黙々と漫画を描いていたタイプのようだった。

それに、眉間には怯えた様子はなく、自信に満ちていた。

この漫画は間違いなく、この作家が描いたものだろう。

彼は表情を和らげ、目の前の風間鈴音に穏やかな口調で言った。「この漫画は君の作品だという証拠はあるの?」

風間鈴音はレンガほどの厚さのノートを三冊取り出した。

「木村社長、先ほど、ドアの外で月見スタジオの作者が、キャラクター設定の初稿や物語の進行、次の展開につ
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