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第140話

自分の幼馴染に怒鳴られた氷川颯真は、少し呆れていた。

彼の幼馴染は良いやつなんだけど、ただ気が短いところがあった。

それに、寝起きの機嫌が凄く悪かった。これが自分の電話だからこそ出たのだが、そうでなければ、電話が壊れるまで鳴らしても出なかったし、後で仕返しもしてくるだろう。

颯真は可笑しそうに頭を振り、続けて言った。「ひろっち、目を覚まして。この事件は小さくないよ。明らかに大事件だ」

起きたばかりの稲山明弘は冷笑し、服を着て無表情で電話の向こうに怒鳴った。

「どこが大事件だと言うんだ。俺の扱う事件は連続殺人犯や知能犯など一連の事件ばかりだぞ!

「それだけ?オーバースペックって言葉が分かる?」

氷川颯真は自分の怒りを抑えた。もし妻が急いで訴訟を起こす必要がなければ、誰がお前を探すものか!氷川颯真、考えてみろ。相手はまだ三時間も寝てないのに、起こされてしまったのよ。

機嫌が悪くないはずがなかった。私だって同じ立場なら、君を殴りたいと思っただろう。

「僕たちは親友よな?これだけは答えて」

電話の向こうの稲山明弘は白目をむいた。やっと少し落ち着いた。

氷川颯真に頼んで、彼に弁護させられるような人物とは…稲山明弘は俄然興味が湧いてきた。

「俺たちは親友だが、それとこれとは別だ。はっきり言って、一体誰のために訴訟を起こすんだ。

「詳しく言え。場合によっては引き受けるかもしれないぞ」

幼馴染の口調が和らいだのを聞いて、氷川颯真の口元に微笑みが浮かんだ。「それは僕の可愛くて美しい奥さんの事件だ」

水を飲んでいた明弘は、口に含んでいた水を吹き出した。満面の不信感で、電話の向こうの氷川颯真に叫んだ。「なんだって?お前のような朴念仁が、やっと妻を見つけたのか?騙そうとしているだろう?訴訟を起こすにしても、もっとまともな理由を探せよ」

氷川颯真は口元を引きつらせ、顔には無力感が漂っていた。「僕が朴念仁だって?あの女たちが誰も僕の欲望をかき立てることができないだけだ。

「やっと心の支えを見つけたというのに、そんな風に言うの?」

もともとやる気のなかった稲山明弘も、今度はやる気を出した。氷川颯真の興味を引く女なんて。

まさに千年に一度の出会いだった。明弘はこの女にしっかり会ってみたいと思った。

「分かった。すぐに行って、お前の見つけたその奥さんが、どんな
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