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第139話

「月影ちゃん、安心して。君のために、すぐにうちの最高の弁護士を見つけてくるから。

「月影ちゃん、君は本当に優しすぎるから。こういう人には絶対に手加減してはいけないよ、分かった?」

「ありがとう、たっくん」

橋本月影の声は甘えているように柔らかかった。

電話を終えた橋本月影は上機嫌だった。彼女は電話を切って冷笑した。たとえ裁判所に訴えても無駄よ。こちらにはたっくんがついているから。

橋本美咲が、自分のかつての恋人が彼女を助けていると知ったら、どんな表情をするのだろう?月影は得意げになり、すっかり忘れてしまった。橋本美咲は今、彼女が言う「たっくん」には全く興味がなかったことを。

ましてや、橋本美咲には彼女を溺愛する素晴らしい夫がいたのだ。

橋本美咲の側でも、橋本月影と似たような状況が起きていたが、対象が全く逆だった。

氷川颯真は電話で焦った様子で橋本美咲に言った。「奥さん、大丈夫か?助けが必要?」

橋本美咲はため息をつき、気を取り直した。「大丈夫よ。ちょっとした問題だから、自分で解決できるわ」

橋本美咲がそう言うほど、氷川颯真はますます心を痛めた。

事を対処する様子があまりに慣れてるので、自分の妻が橋本家では、どれだけの苦労をしてきたのか。颯真は考えれば考えるほど、橋本家を許せなくなった。

颯真は橋本美咲に対して約束した。「奥さん、心配しないで。すぐに世界一の敏腕弁護士を手配して、弁護してもらうから。そちらには絶対に迷惑をかけないわ」

橋本美咲は頭を抱えた。氷川颯真はどこも素晴らしいのだが、時々焦りすぎるのが難点だった。

もう言ったじゃないか。自分で会社を経営するって。もし氷川颯真が手を貸したら、自分が彼に約束したことは何なんだ。

美咲は口を開けて、断ろうとした。

しかし、氷川颯真は妻の断りを全く聞きたくなかったように、そのまま電話を切った。

橋本美咲はため息をついた。こんな小さな出来事で、氷川颯真は世界一の敏腕弁護士を呼ぼうとした。

全く必要ないのに。何より、美咲は橋本月影がどんな手段を使うか予測できた。

どうせ黒崎拓也に頼んで、ここで一番の弁護士を呼んで裁判所で戦うだけだろう。

氷川颯真が電話を切るなんて、本当にひどすぎたわ。もし彼が電話を切らなかったら…

橋本美咲はきっと彼に言っただろう。本当に心配ないって。

慌てていな
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