共有

第2話

その日、私は嬉しくて飛び上がるほど興奮していた。智也が半月も来てなかったからね。

嬉しくて、彼の周りをぐるぐると回っていたら、主治医が困った顔をして言った。「藤井さん、よく考えてくださいね。この手術には失敗のリスクもあります」

「失敗の確率は?」智也は淡々と聞いた。

医者は一番控えめな数字を口にした。「50%です」

「やれ」智也は雪子の手を優しく握りしめて、「どうせ彼女はそこに寝てるだけで、生きてる実感なんてないんだ。目も使えない。

だったら、もっと必要としている人に捧げた方がいい」

医者の顔には、一瞬躊躇の色が浮かんだ。「でも……

もし優花さんが目を覚ましたら、どうしますか?」

「その時はその時だ」

その瞬間、私は何かを察した。

智也は、私の角膜を雪子にあげようとしている?

私を盲目にさせようって?

私はぼんやりと浮かびながら、智也からだんだん離れていった。

二人がイチャつく姿を見て、冷たいものが心の中を広がっていく。

ぼんやりと、私は気づいた。

智也が私と結婚したのは、最初から愛情じゃなかったんだ。

あの時、盲目になった雪子が智也に別れを告げ、彼の前から消えたからだったんだ。

私は、智也のどん底の人生に飛び込んで、彼の苦しい時期を一緒に乗り越えたんだ。

彼がプロポーズしてきた時、「愛してる」なんて一言も言わなかった。

ただ一つ、こう聞いてきたんだ。「優花、もし俺がいつか君の助けが必要になったら……それが君の臓器とか、何かだったとしても、手伝ってくれる?」

恋愛にどっぷり浸かってた私は、即答で「うん、手伝うよ」って言っちゃったんだ。

その時、彼は私の目をじっと見つめてたけど、まるで私を通して誰か他の人を見てるみたいだった。

そして最後に、優しく私の目元にキスをして、こう言った。

「君の目……すごく綺麗だよ」

でも今思えば……

あの時から、智也はもう私の目を狙ってたんじゃないか?

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status