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第4話

脳内に雷が走ったみたいで、頭が割れそうになって目が覚めた。

そうだよな。

私は本当は、死ぬ必要なんてなかったんだよ。

ただ、恋愛に溺れてた私は、事故の時に無茶して智也をかばっただけだったんだ。

だから智也は軽い怪我で済んだけど、私は全身骨折、重度の脳震盪で、昏睡状態になっちゃったんだ。

私は、自分の本気が彼の本気に変わるって信じてた。

でも今になってやっと分かったんだ。もし私の目が健康でなかったら……

きっと2年前に。

もう死んでたんだろうな。

完全に死んだおかげで、やっとあの病室から出られるようになった。

私は母さんに付き添って、自分の後始末がどう進んでいくのか、見届けていた。

オシャレで、50代には見えない母さんが、一晩で真っ白な髪になって、10歳以上も老け込んでしまった。

その震える母さんの後ろ姿を見てると、胸が締め付けられるように痛くて仕方なかった。

私の死亡届を出す日、大晴天だった。

灼熱の日差しの下、母さんの背中はますます丸くなっていた。

そして街で、母さんは雪子に出会った。

恋人は花のように育てるってよく言うけど、帰ってきた時の痩せ細った雪子とはまるで別人だった。

全身に高価なオーダーメイドの服を身にまとい、限定品のブランドバッグを持って、堂々と歩いていた。

その輝く目で母さんを見下ろした時、嫌そうに眉をしかめたんだ。

雪子を見た瞬間、母さんは駆け寄って行って、「し、白石さん!」と声を上げた。

母さんは緊張しながら自分の服の端をいじり、かすれた声で聞いた。「覚えてますか?私、優花の母です。あなたの角膜は彼女が……」

雪子は母さんの手を振り払って、前に突き飛ばした。

「バサッ」と、母さんの手から軽々と落ちた死亡証明書が地面に舞い落ちた。

雪子は何も言わずにその上を踏みつけ、「どこから来た狂った婆さんよ!知らないわよ、あんたなんか……」

母さんは目を大きく見開き、飛びかかりながら、「どきなさい!」と叫び、雪子の足首を掴んで持ち上げようとした。

母さんはそんなに力を入れてなかったはずなのに……

雪子は、突然倒れ込んだ。

目を見開きながら、涙を浮かべて言った。「おばさん、ごめんなさい、全部私が悪いんです。今すぐ目を返しますから……」

彼女は両手を自分の目に押し当て、力いっぱい押しつぶそうとした!

次の瞬間、大きな音がして、母さんの顔に一発の平手打ちが叩き込まれた。

智也はただ手を振り上げ、母さんは地面に叩きつけられた。肘が冷たいコンクリートに擦れて、長い傷ができた。

血が滲み出た。

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