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第6話

智也は一瞬、驚いた表情を見せた。

母さんは地面にひざまずきながら、その紙の破片を拾い集め、「優花に、せめて死亡証明書くらい持たせてやらなきゃ、優花は家にも帰れない……」と呟いていた。

その様子を見て、智也は目を細めて、嘲笑いながら言った。

「周井さん、いくら欲しいんだ?」

母さんは動きを止め、信じられないような表情で智也を見上げた。

彼女の声は、もうすっかりかすれていた。「藤井さん、あなたそれ、どういう意味?」

「そんなに死んだような顔して、まるで自殺でもするみたいな態度を取ってるけど、結局はお前の娘の角膜で金を稼ぎたいだけだろ?」

智也は嘲笑い、「確かに、その金はお前にやるべきだな。

でも、嘘をついて娘が死んだなんて言うべきじゃないだろ。どうせお前の娘の命より、角膜の方がもっと高く売れるとでも思ったか?」

母さんは必死に首を振りながら、「違う、そんなことじゃない……」と涙声で繰り返していた。

智也は小切手を取り出し、「バシッ」と音を立てて母さんの顔に投げつけた。

彼は冷たく、見下すように言った。「この小切手、好きなだけ金額を書き込めばいい。

まるで、お前の娘の命を俺に売ったみたいにな。

これからは、彼女の体も、全部俺のものだ。お前にはもう何の関係もない!

たとえ本当に死んだとしても、その骨さえも俺のものだ。どう処分しようが、誰に渡そうが、俺の勝手だ!」

母さんはその場に座り込んで、呆然とその小切手を見つめていた。

智也の姿は、だんだんと遠くなっていった。

母さんの腕や足から出た血は、もう固まり始めていた。

焼けるような日差しが、彼女の体をさらに赤く染めていった。どれだけの時間が過ぎたのか、やっと彼女が動いた。

そして頭を下げ、まるで死にかけた獣のような絶望の声をあげた。

「優花……どうしてこんな男を愛してしまったの……?」

灼熱の太陽の下、私も突然冷や汗が噴き出した。

心が裂けるような痛みの中で、私は母さんのそばにいた。ただ、彼女を抱きしめて守りたかった。

でも、こんな男を守るために……

私には、もうそのチャンスさえなかったんだ。
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