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第7話

葬式の前日、母さんは病院に来て、私の遺品を片付けた。

小さな箱一つで、すべてが収まった。

私の人生のように、貧しく、空虚で、何も残らなかった。

母さんは引き出しの中から、私が事故前に誕生日プレゼントとして買った金のブレスレットを見つけた。

それは、彼女がずっと大事にしまっていて、使えないでいたものだ。

今回、彼女は涙を流しながら、それを取り出し、腕に巻いた。かすれた声で「私の優花……」と言いながら。

それは、私が彼女に残した、唯一の思い出だった。

母さんは小さな箱を抱え、病院の廊下で焦り顔の智也に出くわした。

智也はまるで宝物のように雪子を抱えていた。

急いで叫んだ。「医者はどこだ!早く来てくれ!

彼女が目が痛いって言ってるんだ、一体どうなってるんだ?」

私の視点から見ると、雪子の顔色は普通だが、その目は虚ろで、恐怖に怯えた表情だった。「どうしよう、智也……また何も見えなくなっちゃった……」

「大丈夫だ、怖がるな、俺が必ず何とかするから」

智也の焦りの表情が、火のように私を焼き付けた。

私が事故に遭った時、智也は異常なくらい冷静だった。

すぐに110と119に電話して、冷静に私を病院に運び、手続きをこなし、何一つ漏らすことなく対処した。涙一つ見せなかった。

当時、私は彼が驚いていただけだと思っていたし、彼はいつもそんな冷静な人だと思っていた。

でも、違ったんだ。

彼は感情がないわけじゃなかった。

ただ、私じゃ彼の感情を引き出せなかったんだ。

雪子を看護師に預けた後、智也はタバコをくわえ、イライラしながら一口吸った。

その時、彼は母さんを見つけた。

智也は機嫌が悪かったのか、突然怒り出し、「何しに来たんだ?」と叫んだ。

「お前の娘はもう俺のものだ。お前にはもう会う資格なんてない!」

その言葉に、すぐに周囲の注目が集まった。

廊下にいた人たちが母さんの方に集まり、彼女が娘を売ったという噂話を始めた。

母さんはパニックになり、「違うの、その小切手は受け取ってないの……」と必死に言った。

「小切手?本当に娘を金で売ったのか、マジで気持ち悪いな」

「ネットでしか見たことなかったけど、こんな母親が本当にいるんだな……自分の娘を売るなんて、最低だよな」

母さんの顔はますます青ざめ、ただひたすら首を振り続けた。「違う、私はそ
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