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第18話

携帯を握りしめ、画面のメッセージを見つめていると、私の唇が自然と上がった。しかし、次の瞬間、また沈んでしまった。

私は孤児だ。息子だけが私の唯一の家族だった。

私たちは母子二人で互いに支え合って生きていた。それなのに、息子が亡くなり、私はこの世界に一人ぼっちになってしまった。

夜になると、私は一人で隅に縮こまり、孤独と悲しみをひとり耐え忍んでいた。涙が溢れ、眠れぬ夜を幾度も迎えた。

私は次第に敏感になり、警戒心が強くなった。外界からの些細な音や変化さえも、私の全身に防御の本能を走らせ、鋭いトゲを立ててしまう。

傷つくことが怖くて、人を遠ざけていたのだ。

だからこそ......

拓真が「真心」を求めていると知った時、私は混乱し、どうしていいかわからなくなったのだ。

......

翌日、榊グループ。

私が拓真のオフィスに入った途端、彼は私を後ろから抱きしめ、その冷たい唇が私の耳元を這い回った。

「鈴......会いたかったよ......」彼の低い声が耳に心地よく響き、唇が私の肌に触れるたびに彼の呼吸はますます荒くなっていった。

彼の手が私の体に触れ、シャツの裾をまくり上げて、その下に手を伸ばそうとした。

体が一瞬で硬直した。

拓真の手が私の体をさすり、私の内側で震えが走り、顔は紅潮した。体の中では異様な感覚が押し寄せ、今にも彼に身を委ねてしまいそうだった。

だが、理性がそれを必死に拒絶していた。

拓真が「真心」を求めていることが頭をよぎり、その一言が私を縛りつけた。

私は彼に真心を捧げられる存在ではない。

幸運にも、ちょうどその時、彼の携帯電話が鳴った。

動きを止めた拓真は、未練がましく手を引っ込めた。

「仕事は仕事、プライベートはプライベート」―彼はその境界をしっかりと分けている。

彼は机の上の電話を手に取り、「もしもし?」と答えた。

私は急いで背筋を伸ばし、しわくちゃになったスーツを素早く整え、荒れた呼吸を落ち着かせた。

電話の向こうで何が話されていたかはわからなかったが、通話を終えた拓真は振り返り、私をじっと見つめた。

「郊外の土地契約、今日契約を結ぶことになった。鈴、契約書を持って行ってくれ」

「わかりました」私は即座に頷いた。

早くオフィスを出たくて、拓真の目に一瞬だけ現れた不自然な表情に気づくこともなかった
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