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第54話

生活は単調だったけど、決して退屈ではなく、夏休みの間に感じた不愉快な気持ちも次第に消えていった。

暇なとき、私は今でも拓海のことを思い出し、私たちが一緒に過ごした十九年間のことを、私のひっそりとした思いを思い返した。

でも、それはただの思い出にすぎなかった。

思い出すたびに、私はまだ胸が痛くてたまらなくなるけど、ひどく悲しくなったときは、もう考えないように自分に言い聞かせ、拓海とはただの隣人に過ぎない、あまり考えすぎないようにしようと自分に言い聞かせた。

私はそう思った。彼への好きと想いは日に日に少なくなっていくと、いつか完全に終わる日が来るだろうし、これからの生活ももっと良くなるだろう。

翔太兄は本当に毎日のように私に食事を奢るのを日課にしていて、時間になると私がどこで何をしていようとすぐに駆けつけてきて、食事に連れて行ってくれた。

多くのとき、翔太兄の友達も一緒で、いつの間にか、私は彼らと顔馴染みになった。翔太兄のおかげで、彼らはみんな私を「美咲ちゃん」と呼んでくれた。翔太兄が忙しくて私のことを見られないときでも、彼らはみんな私の面倒を見てくれた。

翔太兄がいると、私はまるで子供のようで、彼の細やかな気遣いを喜んで享受していた。

でも、神様は私が快適な日々を過ごすのを見逃さなかった。日本画のスケッチが完成する前日に、私は 拓海からビデオ通話を受け取った。

そのとき、私はちょうどお風呂から上がって、机の前で髪を乾かしていたところだった。彼からの電話がかかってきた。

その点滅するアイコンを見て、私は複雑な気持ちになった。

これが大学に入ってから、彼からかかってきた初めてのビデオ通話だった。

彼が何の用で私に電話をしてきたのか分からず、正直なところ、あまり受けたくなかった。なぜなら、この二年間で彼との間にあまりにも多くの不愉快なことがあったからだ。

出たくない気持ちもあったが、出ないと良くないと思った。過去に彼が私にどう接したとしても、やはり一緒に育った縁があったのだから。

しぶしぶ電話に出ると、彼の顔がはっきりと画面に映り、相変わらずの整った顔立ちだった。

私の心は一瞬だけときめいた。

でも、それは本当に一瞬のことで、水面に石が落ちて小さな波紋が広がった後、すぐに消えてしまうようなものだった。

「美咲、何してるの?」彼は楽しそうに笑
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