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第60話

コンテスト用の国画の小サンプルがついに完成した。予想以上に良くできたので、とても満足していた。翔太兄に見せに行こうと思ったら、彼から電話がかかってきた。

「翔太兄、ちょうど電話しようと思ってたの。小サンプルが完成したから、見てほしいんだけど」

「そうか、美咲と僕は以心伝心の仲だね」この声、夜の温かな灯火の中で聞くと、何となく妖しい感じがした。

私は唇を鳴らしながら思った。翔太兄、なんだか私を誘っているような感じがするけど。

そんなはずはない。彼は私を見て育ってきたし、いつも私を子供として見ているんだから、きっと私の気のせいだ。

「それで、翔太兄、こんな夜遅くにどうしたの?」

「大きな仕事を引き受けたいかい?すごく良い仕事だよ」

「話を聞かせて、考えてみる」

「僕の友達の祖父母が年末に金婚式を迎えるんだけど、彼は祖父母の何十年もの人生を絵にしてアルバムを作りたいんだ。それをその日にプレゼントするつもりなんだ。求められる基準が高くて、時間もないから、かなりの高額でお願いしたいらしい」

「どのくらい?」私は北方に来てから、北方の人々の豪快さと簡潔さを深く感じ、彼らのように少ない言葉で最も正確な意味を伝えることを学んだ。

「300万円」

なんてこった、300万円だなんて、彼の友達はなんてお金持ちなんだろう、と感心した。

これを引き受けたら、300万円か、私は自立して小さな富豪になれるんじゃないか。すごすぎる!

でも、無名の現役大学生として、本当に求められる基準を満たせるのだろうか。私はあまり自信がなかった。

翔太兄はまるで私の心を読んだかのように、すぐに励ましてくれた。「美咲はとても優秀だから、きっと素晴らしい仕事ができるよ」

彼は私を本当に信じてくれていた。

「こんなに良い条件なのに、どうして自分でやらないの?」

「僕は男だから、愛に関することはあまり描きたくないんだ」

なるほど、この理由には納得した。

「それなら、代わりに引き受けるよ。まずはコンテストの準備に全力を注いで、10月が終わったらこの仕事に集中する。納品は正月明けだから、そんなに急がなくても大丈夫だ」

電話を切る前に、彼はまた私を呼び止めた。「さっき、画稿を見せるって言ったよね!」

それで、秋の夜の涼しい風の中、私は大切な画稿を抱えて大学院に翔太兄を訪ねに行った。

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