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第39話

昔のことを思い出すと、私はいつも心が弱くなってしまう。

後になって、私が大人になり、本当の恋愛というものが何かを理解したとき、この頃の自分を振り返ってみた。いわゆる心の弱さとは、ただ単にまだ諦めきれていなかっただけだと気づいた。

鈴木拓海は私の表情が少し和らいだのを見て、嬉しそうに目を輝かせ、私の手首を放して口元を緩めて笑った。「昔は気づかなかったけど、君って小さな野良猫みたいだな。結構強いんだな」

私は心の中で思った。そうでしょうね、昔はずっとあなたの後を追うことに夢中で、何でもあなたの言うことを聞いていたからね。私が虎だったとしても、その力を発揮する機会なんてなかったんだ。

それからは特に何も話さなかった。ほとんど彼が話して、私は聞いていただけだった。

彼は大学での生活のことを話し、高橋明日香と一緒に過ごす甘い時間のことを話し、彼らのこれからの計画や将来の生活についての憧れを語った。

彼はいろいろなことを話した。たくさんの人についても話したが、私のことだけは全く触れなかった。

その時、私はふと思った。もしかして彼は私の気持ちを完全に理解しているのではないかと。だからこそ、こんな風に自分の気持ちを伝えることで、私に対してもう彼に期待しないようにと言っているのではないかと。

この食事は、全体的にはあまり楽しいものではなかった。

長年彼が好きだった女の子の目の前で、別の女の子への愛を語るなんて、鈴木拓海は本当に残酷だった。

帰るときには雨がさらに激しくなっていた。強風が街路の両側の木々を吹き飛ばし、黒い厚い雲が低く垂れ込め、雲の中で雷鳴が鳴り、時折金色の稲妻が空を裂いて、雲を四方八方に引き裂いていた。

昼間見た暴風雨の警報を思い出し、突然外に出たことを後悔した。

やはり、彼と一緒にいるときは、ろくなことがない。

二人で使うには小さすぎる女性用の小さな傘が一本だけだった。

「傘は小さいけど、ないよりはましだ。急いで走ろう、きっとあまり濡れないから」鈴木拓海はすき焼き店の前の階段に立って、夜空を見上げながら言った。

私は170センチの身長で、彼は183センチだった。もともと私より頭一つ分高かった。それに私は地面に立っていたので、彼との距離がさらに大きくなり、頭を仰いで彼に話しかけるしかなかった。「私が傘を持つから、あなたは早く走って帰ってくれ
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