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第45話

あの日のことを思い出し、母と父の顔色が一気に暗くなった。快活な性格の母は顎を引き締め、その目には無視できない怒りが宿っていた。

その夜、母は時間がもうすぐ9時になるのに私がまだ帰っていないことに気づき、私の携帯に電話をかけたが、リビングのソファに置き忘れているのがわかった。鈴木拓海の電話も電源が切れていた。

母は言った。風雨が激しくなり、心配でたまらなくなったため、仕方なく叔母の家のドアをノックして状況を尋ねに行った。

そこで母が見たのは、私を家から連れ出したはずの鈴木拓海が、ソファに座って片手で高橋明日香を抱き寄せ、もう片方の手で彼女に果物を食べさせている姿だった。

母が私の行方を尋ねると、彼はなんと無表情で「佐藤美咲はまだ帰ってないの?僕たちは街中で別れたんだよ」と答えた。

父と母は私たちが別れた場所を聞き出すと、傘も差さずに外に飛び出して私を探し始めた。

街には雨風が吹き荒れていて、人影は見当たらなかった。

両親は焦りながら、通りに面した店々を一軒一軒訪ね、私を見かけた人はいないか尋ねた。

あの日は風が強く雨も激しかったため、多くの店が暴風雨の前に閉店して帰宅していた。彼らが尋ねられる人はほとんどいなかった。

その後、あるペットショップの店主が言った。「少し前に119番の救急車が来たようです。誰かが井戸に落ちたらしいですが、それがあなた方の探している人かどうかはわかりません」

母と父が病院に駆けつけたとき、私はすでに救急室のベッドで点滴を受けていて、そばにはあの優しいおじいさんがいた。

両親の話を聞き終えた私は、淡々と笑い、心の中の悲しみは細い小川のように静かに流れていた。

「拓海がそんなに頼りにならないとは思わなかった……」その時の光景を思い出したのか、母は怒りで顔を真っ赤にし、目には充血が見えた。

「お母さん、怒らないで。この件は鈴木拓海のせいじゃない。私たちは血の繋がりがないし、彼が彼女と一緒に帰るのは普通のこと。悪いのは私で、彼と一緒に食事に行くべきじゃなかったんだ。お母さん、もうこれ以上はしないから」

父と母は私を見て胸を痛め、母はまた泣き出して、「なんてバカな子なの……」と呟いた。

ようやく両親をなだめ終えたころ、病室のドアがノックされた。

驚くこともなく、大きな荷物を持った鈴木叔父さんと叔母さんが現れ、その後ろには
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