第42話

鈴木拓海の言葉を信じたことを、心から後悔した。あの時、意志を固めずに彼と一緒にすき焼きを食べに行ったのが間違いだった。

自分を思いっきり罵った。「佐藤美咲、君はすき焼きを食べたことがないのか？たかが一食のために、なんでこんなに惨めな目に遭うんだ？」

結局、すき焼きをほとんど食べることもなく、命をこんなくだらない井戸で落とすことになるなんて、本当に自業自得だった。自分が情けなくて仕方がなかった。

だけど、こんな死に方、私は納得できない！

「誰かいませんか？助けてください！」喉が裂けるように叫び続けた。風雨を突き進んで帰宅する誰かがこの声を聞いて、私を救い出してくれることを願った。

その希望はとても薄かったけれど、私は諦めたくなかった。

通りには風雨と雷の轟音以外、何もなかった。

絶望と恐怖が私を包み込んでいた。

私は自力で這い上がろうと何度も試みた。

井戸はそんなに大きくないから、やれるはずだと思った。

だが、井戸の壁は滑りやすくて足は踏ん張れないし、傷ついた右脚は痛みで力が入らない。這い上がれる可能性はゼロだった。

私はこのまま、音もなく死んでしまうのだろうか？

もしかしたら、このまま死んでしまった方が良いのかもしれない。少なくとも、彼のことを思い出すたびに心が裂けそうになる日々をもう過ごさなくて済む。

けれど、私は死ぬわけにはいかない。

まだお父さんとお母さんがいる。私がいなくなったら、あの人たちは悲しみで死んでしまう。

おかしなことだろう。こんな時に、私は鈴木拓海のことを思い出さず、心に浮かんだのは愛する両親のことだった。

彼が私に与えた傷と失望があまりにも大きかった。

私は悲しみと怒りに満ちた狼のように、大声で叫び続けた。叫び続けて……深い絶望を感じていた。

井戸の中の水面が私の胸の高さを超えたとき、一人の年配のごみ拾いの男性が私を見つけてくれた。

彼は古びた雨合羽の袖に薄暗い懐中電灯をぶら下げ、井戸の縁に身を乗り出して私を見下ろした。

「おじいさん、助けてください！私は怪我をしているんです！」私は頭を仰け反らせて助けを求めた。汚れた雨水が口に入ってきて、生臭くて苦かった。

「心配するな。何か取ってくる！すぐ戻ってくるよ」

老人が去って、世界は再び冷たい静寂に戻った。

静まり返った夜に、私は一人ですべての危険と恐怖