第40話

「高橋明日香だよ、本当に」私は静かに答えた。

しばらく会わなかったけど、母親と一緒に実家に帰ったと聞いていた高橋明日香が、道端の小さな新聞売り場の下に立っていた。彼女は大きな花柄の傘を差し、激しい雨が彼女の短いスカートを濡らし、体にぴったりと貼りついて、その曲線をかすかに浮き上がらせていた。

まるで嵐の中で咲く緑の椿の花のようだった。

彼女は震える唇を押さえ、手を口元に当てて声を張り上げ、「拓海！」ともう一度叫んだ。

鈴木拓海は彼女を見つけると、黒く沈んだ目に一瞬で星のような光が宿り、子供のように飛び跳ねながら大雨の中を駆け出した。真っ白なスニーカーが濁った水たまりを踏みしめ、水しぶきを上げながら、「明日香、帰ってきたんだね！」と叫んだ。

彼は喜びにあふれて走り寄り、彼女を抱きしめてきつく締め付けた。高橋明日香は彼の腕の中で可愛らしく笑っていた。

私は呆然と大雨の中に立ち尽くし、傘がずれていることにも気づかず、目の前が暗くなり、心が灰のように冷たくなった。

鈴木拓海は私を傷つける時、決して手加減しなかった。

風雨は容赦なく私を襲い、この瞬間、私の心はこの激しい雨よりもさらに湿っていた。

二人は抱き合いながら何かを話していた。高橋明日香は鈴木拓海の胸に顔をうずめてくすくすと笑い、何度も彼の胸にすり寄っていた。

鈴木拓海は一瞬私を振り返って一瞥し、何かを気にしている様子だったが、高橋明日香の笑顔があまりにも甘く、体があまりにも柔らかかったため、彼は結局自制することができず、獰猛な虎のように彼女の唇を奪い、じっくりと味わい始めた。

背の高い少年がか弱い少女を抱きしめ、大雨の中で深くキスをする姿は、決して美しいものではなかったが、極めて甘美な光景だった。

私は自分の心が砕ける音を聞いた。

鈴木拓海は高橋明日香を守りながら大雨の中を楽しそうに走り、私をその場に置き去りにした。高橋明日香はもがきながら振り返り、大声で私に叫んだ。「佐藤美咲、私たち先に行くね。気をつけて！」

それは一見、気遣いの言葉だったが、私にはどうしても心が痛む言葉にしか聞こえなかった。

彼らはすぐに遠くに行ってしまった。普段は車がひっきりなしに通る通りに、今は私一人だけがぽつんと立ち尽くしていた。

私は荒れ狂う風雨にさらされ、無人の道路で泣き崩れた。

この瞬間、私はこの嵐と