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第20話

鈴木拓海は携帯を私に投げて寄越し、私は慌ててそれを受け取った。その時、彼の顔に浮かぶ諦めの表情が視界の隅にちらりと映った。

私は少し頭が痛くなり、彼との付き合い方が急にわからなくなってしまった。

彼の近くにいると、彼は嫌がる。彼から距離を置くと、今度は私が小さいことにこだわっていると言った。

どう振る舞っても、彼はいつも何かしら文句を言うのだ。

携帯を手にしても、もうドラマを見る気にはなれず、彼がさっき言った言葉を何度も噛みしめていた。

「君たち女の子って、本当に考えすぎだよ」

君たちというのは、私と誰のことを指しているのだろう? 彼は昔から性格が変わっていて、女の子とはあまり付き合わなかった。私が彼の周りにいる唯一の例外だった。その誰かというのは、考えなくても高橋明日香だとわかった。

彼は私のものではなく、私に属したことなど一日もなかった。私が捧げた想いは、私だけのものだったのだ。

それに気づくと、私は携帯のアルバムを開き、長年積み重ねてきた写真を一枚一枚削除した。

その瞬間、まるで自分の骨から筋を抜き取るような気持ちで、とても苦しくて、惜しい気もしたが、同時にすごく冷静でもあった。

全部消してしまえば、もう何の束縛もないだろう。

9時近くになると、兄からビデオ通話がかかってきて、にぎやかにしばらく話をした。

「美咲、ちょっと来て。お兄さんが話したいことがあるって」

私は素直におばさんの隣に座り、携帯の画面には鈴木翔太が静かに私を見つめていて、その瞳には微笑みが浮かんでいた。「美咲、教授と一緒に外で写生をしていて、迎えに行けなかったんだ。学校では元気にしてる?」

「私は元気です」一年以上会っていない兄は、以前よりもさらに成熟した印象で、その目にはきらきらと輝く星のような光があった。

鈴木拓海も十分にかっこいいが、兄はそれを上回っていた。特に目尻のほくろが、まるで妖怪のような錯覚を与えることもあった。

「食事が合わないんじゃないか? ずいぶん痩せたみたいだけど」

「そんなことないよ。北の料理も結構好きだし、学校の寿司が一番おいしい」

私の食いしん坊ぶりを兄が気に入ったのか、彼は眉を上げて大きく微笑み、たっぷりとした包容力を見せた。「わかった。3月か4月に帰った時に寿司をご馳走するよ」

兄の電話は、この新年の夜に私の心にたくさんの喜びをもたらしてくれた。

夕食は少し長引き、終わったのはもう11時近く、新年の鐘がもうすぐ鳴ろうとしていたが、私はすでに鈴木家のソファでぐっすりと寝入っていた。

父はかなりの量の酒を飲んでいて、母は彼を支えて先に帰ったが、「すぐに戻って迎えに来る」と言っていた。

実は、彼らがテーブルを片付けている間に私はぼんやりと目を覚ましていたのだが、そのまま怠惰な気持ちで目を閉じていた。

「拓海、美咲はぐっすり寝てるね。起こさないで抱えていきなさい。家はすぐそこだし」

「うん」

少し冷たい声が返事をして、それから大きな手が私の方に伸びてきた。

私のぼんやりしていた頭が急に冴え渡り、その馴染み深いのにどこか新鮮な気配が近づいてきて、私は焦り、全力で眠気を振り払って急に起き上がった。

「あっ!」という声が響き、私の頭が何かにぶつかって鈍く痛んだ。

目を開けると、鈴木拓海が片手で鼻を押さえ、もう片方の手で私を指差して、涙目で無言の訴えをしていた。

どうやら私の動きが急すぎて、彼は反応しきれずに私とまともにぶつかってしまったようだった。

私は心配しながら彼の痛そうな様子を見て、申し訳なく思った。

「ごめんなさい。寝ぼけていて、わざとじゃなかったんです」彼の手を伝って流れ落ちる鮮やかな赤い色を見て、私は急いで洗面所に行き、タオルを持ってきた。

彼の恨めしそうな視線を浴びながら、私は気まずい気持ちで家に帰った。

お正月に血を流したから、きっと彼の来年は盛り上がるだろう。これが私からの新年の祝福だった。

数年後に知ったことだが、この時の衝突で彼は鼻血が出やすい体質になったという。

これが私と彼の長い18年間で、唯一彼に残したものだった。

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