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孤高の社長が選んだ運命の恋
孤高の社長が選んだ運命の恋
著者: ゆき

第1話

朝倉鈴音は、結婚一周年記念日に信じがたい事実を目の当たりにした――夫が浮気していたのだ!

いや、正確には、彼はずっと前から浮気していたのかもしれない。鈴音がようやく気づいただけだった。

本来なら、今頃はミュンヘン行きのフライトの中にいるはずだった。

だが、出発間際に悩んだ末、この出張をキャンセルして、代わりに花束とケーキ、そしてワインを用意し、夫にサプライズを計画していた。

今となっては、これ以上ないほどの「サプライズ」を目の当たりにしているというわけだ......

鈴音は部屋から漏れてくる女性の声を再び耳にした。

「裕之、私はもう離婚したの。あなたも早く奥さんと別れてちょうだい。痛みは早く終わらせた方がいいでしょ?」

「離婚なんて、どうせするから焦ることはないさ」朝倉裕之はそう答えた。

彼はかつて、結婚生活は愛さえあれば続けられるものだと信じていた。だが、これまでのところ二人は抱き合うだけで、特に進展がないままだった。

そのうち彼は徐々に退屈さを感じ始めたのだ。

ただ、「離婚」という言葉を口にするのはあまりにも急すぎて、どうやって鈴音に切り出せばいいのか、そして「無一文で追い出す」方法を考える余裕もなかった。

鈴音はスマホを握りしめ、胃の中がひっくり返りそうになるのを必死に抑えた。

なるほど、最近裕之が家に帰る回数が激減していたのも、道端の花を踏みにじっていたからというわけか!

あの女は鈴音も薄々覚えていた。裕之と同じ会社で働く上司だ。裕之は彼女に媚びなければ昇進できないと話していたこともあった。

これが彼の言う「媚びる」という方法なのか?!

鈴音は怒りで歯ぎしりしながらも、部屋のドアを叩き開ける衝動を必死にこらえた。

感情を抑え、手に持っているケーキと花束を投げ捨てることなく、もう片方の手でスマホを取り出し、カメラを起動して寝室内の光景を写真に収めた。

......

鈴音は足早にマンションの玄関を出て、持っていたものをゴミ箱に放り込み、そのままタクシーを止めた。しかし、その瞬間、ポケットのスマホが鳴り出した。

彼女は電話に出ず、後部座席に腰を下ろしたものの、スマホの画面はしつこく点滅を繰り返し、まるで諦める気などないかのようにしつこく鳴り続けた。

鈴音は苛立ちを抑えきれず、ついに電話に出た―

受話器から聞こえてきたのは義母の大声だった。

「鈴音!あんた一体どういうつもり!?私がせっかく市内トップの生殖科の専門医を予約してやったのに、すっぽかすなんてまだしも、私の電話まで無視するなんて!あんたが朝倉家の子供を産む気がないなら、さっさと言いなさい!今すぐ裕之と離婚しなさい。朝倉家に嫁ぎたい女なんて山ほどいるんだから!」

耳元で義母の罵声が続き、「朝倉家」という言葉が繰り返されるたびに鈴音の拳は固く握りしめられた。

結婚して朝倉家に入ったその日から、義父母は鈴音を朝倉家の一員だとは一度も思っていなかった。

彼らの目には、鈴音は貧しい家の娘で、背景もなく、朝倉家のために子供を産むことを誇りに思うべき存在だと思っているのだ。

はぁ、あの時どうして裕之の言葉を信じてしまったのだろう」

彼の言葉を信じ、一生大切にしてくれる、両親もいつか自分を受け入れてくれる、そして過去の傷を気にせず、自分のペースで心を開くことができると。

そう、鈴音は心を開く準備をしていたのに、彼はどうだった?

義母の罵声を聞きながら、さっきのマンションでの光景が頭をよぎり、鈴音は怒りで手が真っ白になるほど力が入った。

彼女はスマホを握りしめ、息を整えて言葉を絞り出した。

「安心してください。絶対に離婚しますから。あなたに言われなくても結構です。それから、孫が欲しいんですよね?わかりました、産みます」

ただし、裕之の子じゃないけどね!

あの男が浮気しているなら、こっちだって離婚前にちょっとした仕返しをしても問題ないのだ。

「こ、この下品女!何を言ってるのよ!」電話を切る直前にも義母の怒号が耳に残った。

鈴音はそのままスマホの電源を切り、タクシーの運転手に告げた。

「運転手さん、『天楽宮』クラブへお願いします」

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