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第25話

鈴音は裕之にメッセージを送り、今日は部門の幹部の誕生日があるので、迎えに来てほしいと伝えた。

しかし、裕之は案の定、予定があるから迎えに行けないと返事をしてきた。自分でタクシーを使って帰るようにとのことだった。

やっぱりね!

彼が迎えに来たら、彼と寧々が仕組んだシナリオが進まなくなるからだろう。

鈴音はそれ以上何も言わず、退社後、数人の同僚とタクシーでホテルへ向かった。すでに多くの同僚が先に到着しており、大部屋は話し声で賑わっていた。

しばらくして、部長も到着した。

部長のそばには数名が付き添っており、常駐している副社長のほか、他部門の幹部たちもいた。もちろん寧々も同席しており、鈴音と目が合った。

「鈴音さん、こっちの席に来なよ」寧々が声をかけ、笑顔を浮かべた。「鈴音さん、フランス語が得意って聞いたわ。ちょうど私も最近フランス語を勉強してるから、ぜひ教えてほしいの」

「ご丁寧にどうも」鈴音も微笑みながら言い、ためらいなく席に座った。

鈴音の隣には一人の男性が座っていた。鈴音は少しだけ目を向け、彼が高層幹部ではなく、自分と同じ部門の川口蓮生であることに気づいた。彼の叔父は別の部門の幹部だという。

瞬時に鈴音は察した。

この蓮生が、おそらく寧々が仕組んだ人物だろうと。

蓮生は友好的に鈴音に挨拶をし、何も異常なところはなかった。鈴音も平静を装い、軽く頷いて応じた。

食事が進む中、各テーブルで酒が振る舞われ始めた。

寧々は優しくて善良なリーダーのように振る舞い、副社長がいる手前、規律を守りつつも、みんなと話を盛り上げていた。そして何度も鈴音にお酒を勧めた。

鈴音も断らず、勧められるままに飲んでいたが、実はずっと準備をしていた。飲み物は口に含んで、人が見ていない隙に袖の中のスポンジに吐き出していたのだ。

そうでもしなければ、寧々のペースで赤ワインと白ワインが交互に出てきたら、酔うどころか体調を崩してしまうに違いなかった。

「朝倉副社長!」

誰かがそう叫んだのをきっかけに、テーブルの人たちは一斉に立ち上がった。

鈴音が振り返ると、まさかの司が現れた。今日は以前よりもさらにフォーマルな服装をしていて、隣には赤いドレスを纏った詩亜瑠が付き添っていた。二人はまるでどこかのパーティーから抜け出してきたかのようだった。

「みなさん、ご丁寧にどうも。
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