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第2話  

佐藤舟也が失明したのは、事故だった。

交通事故で両目を永久に損傷し、視力を取り戻すには新しい角膜を移植するしかなかった。

目が見えなくなった途端、佐藤家は彼を無価値とみなし、家業を継ぐ資格がないと判断した。

彼は病院に置き去りにされた。

当時彼の恋人だった田中彩香も、いつの間にか姿を消した。

佐藤舟也に長年片思いしていた私は、ただ彼のそばで世話をすることしかできなかった。

そして、その深夜、彼は突然私に告白してきたのだ。

驚きと喜びで頭が真っ白になり、彼がようやく私を受け入れてくれたと信じ込んだ。

だから翌日、病院が彼の角膜移植手術が可能だと言ったとき、私はためらいもせず申し出た。

「私の角膜、使えないか?」

最初、彼は拒否した。

「絹子、君を巻き込むわけにはいかない」

でも私は固く決心していた。「大丈夫、本当に!この目があれば、君は佐藤家を継いで、夢を追い続けられるよ」

彼は何度もためらいながら言った。「でも君はどうするんだ?」

その一言で私はさらに覚悟を決めた。

「私は君がいるじゃない。これからは君が私の代わりに世界を見せてくれるんだね!」

月明かりの下、彼は手を挙げて誓った。

「絹子、俺はこの一生、絶対に君を裏切らない」

角膜を移植してから、彼は本当に私によくしてくれた。

佐藤家の両親も私を息子の妻として認めてくれた。

彼の至れり尽くせりの世話の中で、私は愛に溺れる女になり、仕事も辞め、親の反対を押し切って家を飛び出し、命がけで彼と結婚しようとした。

両親にはこう言った。

「彼は絶対に私を裏切らないから!」

しかし、私の幸福は田中彩香が戻ってきた日を境に終わった。

いつも漂う同じ香水の香り。

次第に遅くなる帰宅時間。

忘れられた無数の記念日。

ますます荒れてきた気性。

そして、何度も延期される結婚の日取り。

恩が重荷になったのだろう、彼が私に最も傷つけた言葉はこうだった。

「絹子、俺はいつ君に角膜を提供してくれなんて頼んだ?

最初から、君が勝手に角膜をくれるって言ったんだろ?最初から、君は恩を着せるつもりだったんじゃないか?」

その日、胸の中で膨らんでいた感情が、まるで針で刺されたかのように、一気にしぼんでしまった。

私は初めて、佐藤舟也が私を本当に愛してはいないのかもしれないと気づいた。

 

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