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第15話  

彼はまだ、私がただ彼と喧嘩しているだけだと思っているのだ。

私はワイングラスを揺らしながら、黙っていた。

舟也は深いため息をつき、一言一言噛み締めるように言った。

「絹子、あの証拠を姉に渡したのは君だって分かっている。

考えてみたけど、君以外にそんなことができる人はいない。

君が私が彩香を選んだことをまだ引きずっていて、だからこんな手段で私を追い詰めようとしているんだろう。君が証拠を引っ込めれば、すぐにみんなの前で、この結婚式が君と私のものだと発表するよ」

彼は無力そうに言った。

「どうして愛する私を置いて、瑠音を手伝って私を陥れようとするんだ?」

彼の自分勝手な言葉を聞いて、私はふと、もう悲しんでいないことに気づいた。

ただ、笑えてくる。

笑う理由の一つは彼がこんなにも自己中心的で、今でも私がすべてを挽回しようとしていると思っていることだ。

そしてもう一つの理由は、私が長年こんな男を好きでいたことだ。

彼のために視力まで失った自分が滑稽に思えた。

私は疑問を込めて言った。

「でも、みんなは私が浮気してあなたに恥をかかせたから婚約を解消したって言ってるわよね」

佐藤舟也はその瞬間、希望を見たのか、すぐに言った。

「絹子、調べたんだ。あの男は彩香がわざと君を嵌めるために呼んだんだ!」

私は冷静に返した。

「つまり、私が君を助ければ、君は彩香との婚約を解消して、彼女が人を使って私を嵌めたことを全員に伝えるってこと?」

佐藤舟也は断固として言った。

「そうだ。

今日、すぐに結婚しよう!

君はずっと私と結婚したかったんだろう?」

私は軽く笑い、スマホを取り出して電話に向かって言った。

「田中彩香、佐藤舟也が言ったこと、ちゃんと聞こえたか?」
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