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婚約者のために失明した私が、彼から映画のチケットをもらった
婚約者のために失明した私が、彼から映画のチケットをもらった
著者: スイカ頭

第1話  

ドアを飛び出した瞬間、くしゃくしゃになった映画のチケットを破いてゴミ箱に捨てた。

急いで家を出たので、盲導杖まで忘れてしまった。

玄関に置いてあった鉢植えにぶつかり、割れた陶器の破片が足に刺さった。

私は軽くうめき声を上げた。

田中彩香がすぐに気づいて声をかけた。「舟也お兄さん、彼女、怪我したみたい。見に行かないの?」

佐藤舟也は不機嫌そうに言った。

「家出なんかしてさ、ちょっと痛い目に遭わないと、この数年間俺がどれだけ彼女を守ってきたか分からないんだよ!」

「ほっとけ、ぶつかってみないと気づかないんだから!」

田中彩香はため息をつき、「私はこっちの映画のほうが好き。どうせ彼女は行かないんだから、舟也お兄さん、私と一緒に行かない?」と言った。

佐藤舟也は迷うことなく彼女に同意し、私の血があふれ出ていることなどまったく気にしていなかった。

私は足を引きずりながら、心が切り裂かれるような思いで家を後にした。

途方に暮れて街角に立ち尽くし、冷たい風が体を吹き抜けるその瞬間、ようやく後悔した。

あの時、彼に自分の角膜を提供すべきではなかったと。

手探りでスマホを取り出し、彼にメッセージを送った。

【別れよう】

なんとも滑稽なことに、私は自分の失明を代償に、こんな婚約者を手に入れたのだ。

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