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第7話  

結婚式の準備は順調に進んでいった。

結婚式の会社からどんな花を使うかと聞かれたときも、私は迷いなく答えた。

「黄色いバラにしましょう。あれは田中彩香の一番好きな花だから」

業者たちは田中彩香が誰なのか知らず、ただ曖昧に返事をしていた。

姉の話では、結婚式当日、黄色いバラを見た田中彩香は満面の笑みだったという。

彼女は幸せそうに佐藤舟也に言った。

「舟也、やっぱりあなたは私を愛してくれているのね。

彼女と形式的に結婚して、他人に見栄を張ったら、数年後に離婚すればいいのよ。私はずっと待っているから」

佐藤舟也は微笑みながら、入口の方を見ていた。

結婚式の開始時間が近づいているのに、私は姿を見せなかった。

彼の顔には次第に焦りの色が浮かび、やがて電話をかけまくり始めた。

しかし、私は彼をブロックしていたのだ。

次々に人々が彼を祝っていた。

「佐藤さんの視力回復は、奥様の支えがあったからですね。お二人は本当にお似合いです」

「会社を大きくしながらも、昔からの妻を大事にしているなんて、さすがです」

そんな賞賛の声に包まれる中、彼は次第に冷静さを失い、苛立ちが爆発した。

彼は姉を見つけ、詰め寄って言った。

「野村絹子はどこだ?!お前たち野村家が彼女を隠しているんだろう!」

彼の顔は怒りで真っ赤になり、姉の話では、彼が八桁の契約を逃しても、こんなに取り乱したことはなかったという。

私はそれを聞いて、すごくすっきりした。

姉は彼の焦りを楽しみながら、わざと驚いたふりをして言った。

「絹子?彼女と別れたんじゃなかったの?

今日はあなたと田中彩香の結婚式だと思っていたわ。部屋中の黄色いバラ、彼女の一番好きな花だろう?」
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