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第10話  

その後、姉が結婚式の一部始終を私に話してくれた時、私はしばらく沈黙していた。

姉は私に尋ねた。

「どうしたの、まだ心残りがあるの?きっとまだ気持ちの整理がついてないのね」

「もう十分だよ」

そう答えた後、私はその夜のうちに飛行機のチケットを買い、帰宅した。

行く場所がなかったので、姉の家にしばらく滞在することに決めた。

まさか、佐藤舟也が玄関で私を待っているとは思いもしなかった。

彼の香水の匂いが漂ってきて、私は反射的に鼻をつまんだ。

その香りは、田中彩香が帰国してから佐藤舟也がつけるようになったものだ。

彼は一歩近づき、私を抱きしめようとしたが、私は彼を強く壁に押しつけるまで必死にもがいた。

「どうかしてるんじゃない?佐藤舟也、私たちはもう別れたんだ。」

佐藤舟也は呼吸が乱れて、少し気まずそうに前に進み、私の手を握り、小声で慎重に言った。

「絹子、もうやめよう。

あのことは……俺が悪かった。君を一人で外に残しておくべきじゃなかった。

結婚式はもう一度計画した。来月、同じ日に盛大な式を挙げるよ。どうだい?」

佐藤舟也がこんな風に慎重に私に話すのは、久しぶりだった。

でも、今の私にとってそれはただ滑稽に思えるだけだった。

なんて滑稽な話だろう。

もう私は彼を必要としていないのに、今さら彼は必死に私とやり直そうとしているなんて。
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