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第5話  

あの日、私は姉に迎えに来てもらった。

電話の向こうから聞こえる懐かしい声に、私は思わず大声で泣き崩れた。

姉は胃の出血で入院していたのに、私が何かあったことも知らないまま、ただ私の泣き声を聞いて、点滴を抜いて飛んできてくれたのだ。

ぼろぼろの私を抱きしめ、姉は痛ましそうに言った。

「絹子、どうしてもっと早く私たちに言わなかったの?辛い思いをしてたのに...

両親が本気で絹子を責めるわけないでしょ。ただ、絹子に頭下げるのが面倒くさいって思ってただけよ!

彼がうちの野村家の人をいじめるなんて、絶対許さないからね!」

野村家は佐藤家ほど代々続く名門ではないが、それでも裕福で影響力もあった。

だから、当時両親があんなにも怒ったのだ。

両親は理解できなかった。私は金銭的にも愛情的にも報われないのに、なぜあんなに恋にのめり込んだのか。

私自身も、あの頃の自分がよくわからない。

でも、ありがたいことに、私はやり直すチャンスを得た。

姉は一時的に私を遠くへ連れ出して、気分転換させてくれた。

半月が経ち、私は激しい禁断症状に苦しんだ。

けれど、私は自分を律して、佐藤舟也に一度も連絡しなかった。

そしてついに、ある夕方、彼からメッセージが届いた。
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