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第16話

カメラの中に静子の半分だけ映った顔が時々現れ、見つけやすいように赤い丸で位置が示されていた。

静子は汗でぐっしょりで、押し寄せる人混みの中で狼狽しながらも怯えた表情を浮かべていた。彼女は峻介を見かけ、その方向を見つめながら峻介の名前を叫び、懸命に前へ進もうとしていた。

そして静子の顔がカメラに完全に映った瞬間、突然身体が前方に突き出され、峻介が里美を支えている腕にぶつかった。里美のハイヒールが折れ、倒れてしまい、皆の悲鳴の中で峻介に守られながら階段から転げ落ちていった。

ネットで急速に拡散された動画はここで終わっていた。

誰かが明らかに静子を背後から押したのだ。

悠斗は、優子が静子に会いに行こうとするのを見て車をUターンさせ、警察署の前で彼女を待っていた。

優子がタクシーから降りてきたのを見て、車の横でタバコを吸っていた悠斗は、つま先でタバコをもみ消し、彼女の前に立ちはだかった。「優ちゃん、君と峻介の誤解はもう十分深いんだ!静子さんが君を数ヶ月育ててくれたことは分かるし、彼女に情があるのも理解できる。でも、君が関わってしまうと、峻介は静子さんが里美ちゃんを傷つけるように指示されたと誤解するかもしれない。それで峻介が静子さんを許すと思うのか?」

「私はもう峻介と離婚したのに、彼女が里美に何かする必要はあるの?」優子は悠斗の手を押しのけた。

静子と今日の騒動を起こしたファンたちは皆逮捕され、拘束もされていた。

半年ぶりに会った静子は、優子を見るなり急に立ち上がり、青ざめた顔に涙を浮かべていた。

「座りなさい!」と警察官が静子に言った。

静子は怯えながら座り、視線を優子から外さなかった。

優子が警察と簡単に話をした後、彼女の方へ歩い行くと、静子は泣きながら言った。「優ちゃん、私、悪いことしてないよ!誰かが私を押したんだよ!警察にも話したの。私は悪い人じゃないって!」

優子は静子の手錠を握りしめ、彼女を落ち着かせるように言った。「分かってる。私も動画を見たから。静子さん、怖がらないで。まず、どうして空港にいたのか教えてくれる?」

「私が霧ヶ峰市に来たのは、ちょうど1週間前なの。高橋家の人たちが私を見つけて、直歩が結婚する年齢になったから、お母さんの連絡先を教えてって言われたんだ。でも、母はもう亡くなったって言った後、今度は祖父母の連絡先を教えてって。直歩も祖父の孫だから、結納金を出さなきゃいけないって。でも私は知らないって言った。数日前に健介が電話してきて、彼は直歩をテレビの家族探し番組に出演させるつもりだって言ったの。もし母や祖父母の連絡先を教えなければ、身元を公開して、名誉を汚すって言われたの」

静子はそう言って泣き出した。「私はあなたが霧ヶ峰市にいることを知っていたの。その写真のことも……本当に心配した。でも電話で聞く勇気がなかったの。昨日、突然《家族探しの記録》っていう番組のスタッフから電話が来て、いくつか質問された。番組が航空券を出すから霧ヶ峰市に来てって言われて、証言者として出演してほしいって。私はあなたのために話をするつもりだったのよ!そして、あなたと峻介にも会いたかったの!」

家族探しの番組!

優子の心は跳ね上がった。

静子は涙を拭きながら続けた。「あなたと峻介が毎年夏と冬に一緒に過ごした写真を持ってきたの。峻介は記憶を失っているから、その写真を見せれば、もしかしたらあなたのことを思い出すんじゃないかって!さっき空港で峻介を見かけたとき、私は……私は峻介に写真を見せようと思ってたの。決して誰かを傷つけようとしたわけじゃない!私はそんなことしないわ!優ちゃん、私を信じて!」

静子は峻介が記憶を失っていることを知らなかった。彼女が優子に電話するたびに峻介との結婚を早く済ませるようにと催促していたのだ。

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