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第55話 友達より恋人を重視する

ファントムの車内、椿はシートに寄りかかり、目を細め、全身から寒気を放っていた。明らかに機嫌が悪いことがわかる。

隣に座る遊馬は彼をちらりと見て、感慨深げに言った。

「この霧島って結構手腕があるんだな」

椿だけでなく、あの人面獣心の戦場ヶ原堯之までも魅了してしまうとは、なかなかのやり手だ。

椿はそれを聞いて冷笑し、ゆっくりと目を開けた。黒い瞳は底知れない深さを持っていた。

「彼女はバカだからだ。戦場ヶ原が何か企みがあると警告したのに、それでも接触したんだ」

「どうしてバカだと思うんだ?もしかしたら彼女は戦場ヶ原みたいなタイプが好みだったりするとか」

遊馬が反論すると、椿はさらに怒りを募らせた。

彼女が宇野家の人間を好きじゃないと言ったばかりなのに、すぐに戦場ヶ原と一緒になるとは、まさか戦場ヶ原という苗字が気に入っているのか?

「今夜彼らが何かをやらかすかもしれないな。戦場ヶ原がどんな奴か知ってるだろ、椿を困らせるのが大好きなんだよ」

遊馬は続けて言った。

遊馬は思わず身震いし、隣の男を見やった。まるで氷の彫像のようだ。

そこまで気にしてるのか?彼は驚いた。

「部下はもう情報を掴んだ。今夜中にはあのDr.霧島の元夫がどんな人物か判明できる」

彼はそのことに非常に興味があった。その女性を屈服させた男とは一体どんな人物なのか?

しかし、椿はまるで聞こえていないかのようで、頭の中は遊馬が言った今夜の出来事のことでいっぱいだった。

「車を止めろ!」

彼は突然口を開いた。

車が急に止まると、遊馬が何事かと尋ねようとした矢先、椿は「自分でタクシーを呼べ」と言った。

「???」

「本気か?」

彼は信じられない気持ちで、半ば呆れて言った。

「用事ができた」

椿は答えた。

「はは」

遊馬は目を白黒させ、

「霧島さんを探しに行くんだろ?」

急ぎの用事?

どうせ二人が本当に何かやらかすのが怖いんだろう?

椿は冷たい視線を彼に送り、威圧感が漂った。

遊馬は両手を挙げて降参のポーズを取った。

「わかった、わかったよ、降りるから」

そう言って、彼は車のドアを開けて降りた。そして最後に一言、

「お前の方が堯之よりも強いんだから、負けるなよ」

「運転しろ!」

椿は言ったが、遊馬を無視した。

遊馬は遠ざかる車を見つめ、肩をすくめなが
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