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第3話

薫は結局斎田のために、深夜に十キロ以上遠いところまで車で薬を買いに行った。

斎田が胃薬を受け取ったとき、突然目を赤くした。

薫は慌てて、急いで原因を尋ねた。

俺は目の前の光景を見つめ、また目が暗くなった。

斎田は薫の心の中で常に特別な人として存在する。彼が眉をひそめるたびに、薫の心には大きな波が立つ。

そして俺は、取るに足らない存在で、死んでも薫の注意を引くことはできなかった。

斎田はまだ流れ出していない涙を拭くふりした。

「大丈夫、ただ留学していた数年間、胃が痛くて一晩中眠れなかったことを急に思い出しただけ。その時僕の周りには誰もいなかったから」

「勝俊のように、薫みたいな賢い妻がいなかったから」

薫の目が暗くなり、心痛む表情を浮かべた。

「あの頃は苦労したね」

幸い今は魂になっているから耐えたが、さもなければ叫び声を上げてしまいたいほどだ。

斎田が言っていた「一晩中眠れなかった」のは、実は胃痛のせいではなかった。

薫が頻繁に斎田を訪ねていたあの時期、俺は斎田を調査するように頼んだことがあった。

彼は外国で何人かの女と付き合い、ギャンブルにも手を染めていた。

斎田が帰国したのは、主に彼が大学で多くの科目が不合格となり、卒業が見込めず、両親から仕送りが断たれたため。

斎田が薫に近づいたのは、彼女が今うまくやっていて、利用価値があると思われているに違いない。

俺はかつて薫にこれらのことを話したことがあった。

しかし、薫は信じてくれなかった。

それどころか、俺が斎田を陥れようとしていると彼女は断言した。

「勝俊、あなたがこんなに心が狭い男だとは思わなかった。丹吾さんに嫉妬してるからって、なんでも言いたい放題じゃないよ」

「私は丹吾さんと知り合ってから長い時間が経ったよ、彼の人柄ならは私が一番よく知っている。彼が留学したのは、親に強制されたからだ。もし彼に選択肢ができたら、きっと私を選ぶはずよ」

俺は呆然と薫を見つめ、心の中で何度も浮かんだことのある質問を口にした。

「もし斎田が薫のそばに残ってくれたら、薫は彼と結婚するんだろ?」

薫は少し驚いた。

そして何も話さなかった。

俺はすでに彼女の目から答えが見えた。

おかしい話だが、薫は自分を一回捨てた斎田のことを信頼しているのに、困難な時期を共に過ごした俺を信じようとはしない。

何かが最初から間違っていたようだ。

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